清風園(戸倉上山田温泉)

このところ何だか仕事が忙しく、休暇の予定を入れにくい日々が続いていた。そんな中、ようやく隙を見つけて休みを取ったら運悪くお盆休みの時期に重なってしまい、宿はどこも満室。
せっかく休めるのに温泉は無理か...と悲しく諦めかけたとき、奇跡的にも清風園に空室があるのを発見した。
清風園は機会があれば泊まってみたいと思っていた宿で、何となく先延ばしになっていたのだけれど、ついにその機会が巡ってきた!

清風園がある戸倉上山田温泉は、今回初めて訪れる温泉地。
最寄りの戸倉駅は、上田駅からしなの鉄道に乗り換えて15分強なので楽にアクセスできる。
歓楽的な色合いの強い温泉街がちょっと寂れてきているらしい、という印象を持っていたのだけれど、実際のところどんな感じなのか興味を引かれつつ戸倉駅に降り立った。
改札は無人だったけれど、そこそこ降りる人もいて、それほど寂れた感じではない。
この日は台風が通過した直後で、晴れたり曇ったり不安定な空模様だった。

まずは遅めのランチを取るべく、茅葺屋根が素敵なお蕎麦屋さん「萱」へ向かう。駅から歩いてすぐのところにあるので、迷わず辿りつけた。お盆の時期にありがちな臨時休業でもなく、ちゃんと営業しているのを見てホッとする。

既に1時半を回っていたけれど、人気のお店らしいので待っているお客さんがまだ数組いた。とは言え、お蕎麦だから回転は速いようで、名前を記入して待っていたら10分か15分くらいで席に通して頂けた。
遅い時間なので売り切れのメニューもあったものの、それほどこだわりはないので、選べる中から「千曲そば」と「二種キノコ天ぷら」を注文した。

細めで硬すぎない上品な感じのお蕎麦を、普通のつゆ+とろろ+くるみだれの3つの味で楽しめる。つゆ→とろろ→くるみだれと順番に食べ進めると、くるみだれが甘くないタイプですごく好みだったので、結局ほぼ全量のお蕎麦をくるみだれで食べてしまった。
キノコの天ぷらは舞茸と山伏茸と書いてある。山伏茸って初めて食べる気がするけれど、どんなキノコなんだろう?とワクワクしながら齧ってみたら、かなり繊維が多い、ちょっとエノキダケに似た感じだった。でも明らかにエノキダケとは違う独特の食感で美味しい。舞茸と交互に味わい、結構ボリュームがあったけれど、空腹だったのであっという間に完食した。

お会計を済ませた後、お土産売場を物色していると日本酒の試飲をお勧めされたので、喜んで味見させて頂く。
このお蕎麦屋さん、元々は造り酒屋だったのだそうで、そういえば入口の軒先に杉玉が吊るされていた。
女性に人気という口当たりがまろやかなタイプと、度数が強くインパクトのある原酒。どちらも美味しく、なんだか得した気分♪
韃靼そば茶と干しあんず、季節限定ももプリンをお買い上げして店を後にした。

駅へ戻ると雨がパラパラ降り始めた。そこへちょうどよく早めに循環バス(ほっとバス 上山田線)がやってきたので、バスに乗り込んで雨宿りしつつ出発を待った。
この循環バスは一般的な宿のチェックイン・チェックアウト時間に合わせて走ってくれているので助かる。
7分ほどバスに揺られ、宿の最寄りの停留所「上山田温泉公園」で降りると、雨は止んでいた。
適当にこっちの方だろうと歩き始めたものの、なかなか着かないので、仕方なくGoogleマップを取り出して確認すると、案の定逆方向に向かっていた。
やれやれと思い踵を返すと、再び雨が降り出し、あっという間にゲリラ豪雨となった。折り畳み傘を取り出して差したけれど、もはや傘など意味がない、バケツをひっくり返したような土砂降り。
方向音痴なんだから最初から地図を確認していれば...と自嘲しつつ歩き続け、水も滴る濡れネズミ状態になって宿に辿り着くと、入口付近にいたスタッフさんがすぐに寄ってきて荷物を持ち、フロントに案内して下さり、タオルも持ってきて下さった。親切!

部屋に通された後、濡れた服を脱いで浴衣に着替えると、少し落ち着いた気分になった。

今回の部屋は、お得なコンパクト洋室。眺望が良くないということで、窓から見えるのは隣のホテルの屋上(?)だけれど、別に構わない。
トイレ・洗面ルームは爽やかな色調のタイルで、いい感じ♪
洗面台の左側にはお風呂もついているけれど、これは温泉ではなさそう。

ヨーロピアンな感じのデスクとクローゼットなのに、履物は下駄風で異彩を放っている(この履物はスリッパよりも脱げにくく、館内の移動に便利だった。)
デスクの天板もいい味を出しているし、コンパクトながら居心地の良いお部屋で気に入った。
その都度沸かすタイプのポットでお湯を沸かして緑茶を淹れ、濡れネズミになったダメージから立ち直るまでしばしくつろぐ。部屋に用意されていたお菓子は林檎パイと昆布のおつまみだった(シブイ!)

温かいお茶を飲んで元気が出たところで、ようやくお風呂へ入りに行くことに。
エレベーターで1階へ降りて、長い廊下を大浴場へ向かって歩いていくと、窓の外にはよく手入れされた庭園が広がっていて気分が良い。

大浴場は「萬天の湯」と「さざれの湯」が男女入れ替え制になっている。その他に有料の貸切風呂も3つあった。
この日は廊下のつきあたりにある「萬天の湯」に入った。(撮影禁止だったので、写真なし)

大型旅館だし満室のはずなので、お風呂も混んでいるだろうと思ったら、先客は4、5人だけで空いていた。
内湯には壁で仕切られた洗い場がたくさんあり、浴槽との距離も十分あるため、シャワーの水が浴槽に飛ぶ心配がなくて好印象。黒っぽい石で作られた重厚な感じの浴槽には無色透明の源泉がかけ流されている。身を沈めると、やや熱めの温度だった。
戸倉上山田温泉の宿は硫黄泉のところが多い印象だけれど、清風園はアルカリ性単純温泉なので、匂いも全くしないマイルドなお湯。すぐに温まってきてのぼせそうだったので露天風呂へ移動すると、こちらの方が少しぬるめでゆっくり浸かれた。
単純温泉なので、これといった特徴はないものの、しばらく浸かっていると肌がツルツルしてきて、じんわりといい湯だな~と思った。

お風呂から上がった後、脱衣所に飲泉用のウォーターサーバーがあったので、冷やした温泉水を飲んでみると、やはり匂いも味も特になくて飲みやすい。でも、普通の水とは違うまろやかさがあって美味しかった。
壁に貼ってあった温泉の説明を読んでみると、清風園は3つの源泉を所有しており、それが22℃~34℃なので加温しているものの、加水も循環もしていない。薬品等の使用なしと書いてあるので、塩素も入れていなさそう。「専門のスタッフが毎日、お風呂を磨いています」という記載もあり、お湯に対する真摯な姿勢が伝わってきて嬉しい。

お風呂の後は、ライブラリーに行ってみた。

清風園の館内は、どこへ行っても掃除が行き届いていて雑多な物が何もないので、心地良く過ごせる。
ライブラリーの本は客室へ持っていってもOKだったので、いくつか雑誌を選び、そのうちの1冊を椅子に座って読んでいたら、足があちこちむず痒くなってきた。
あんな穏やかなお湯なのに、泉質が合わずにブツブツが出たんだろうか?と怪訝に思いつつ部屋に戻り、浴衣の裾をまくって調べてみると、何のことはない、蚊に刺されまくっていた。
館内でこんな憂き目に遭うなんて、どこまで蚊を引き寄せるパワーが強いんだ、自分💧

今回は朝食のみのプランなので、この後は時間を気にせずダラダラ過ごせる。
冷房の効いた涼しい部屋のふかふかのベッドで雑誌を読んでいるうちに眠くなり、目覚ましをかけずに寝落ちした。

目覚めると空腹を感じたので、予め買ってきておいたパンで小腹を満たし、お風呂が夜1時までだったので、12時少し前に入りに行ったら誰もいなかった。
ひとり静かに露天風呂に浸かっていると虫たちの声が聴こえてきて、うっすら秋の気配が漂い始めていた。
夜の庭を眺めつつ、静まり返った長い廊下を歩いて部屋へ戻り、冷蔵庫で冷やしておいたももプリンを味わった。
プリンの上にゼリー層があり、ひとかけの桃(ちょっと硬め)がトッピングされている。意外と酸味もあって美味💛

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

最後の入浴は朝食前に行くことにして、「さざれの湯」へ。こちらは「萬天の湯」より少し小さい感じ。
早朝のお湯はツルツル感が強く、泡もたくさんついて、昨日より鮮度が良い気がした。
遅めの8時過ぎに最上階の朝食会場へ行くと、窓際席が空いていたので、千曲川を眺めながら食事を楽しむことができた。
千曲川は思っていたより川幅が狭く、穏やかに流れている。川に沿って遊歩道があり、散歩をしている人がいたので、いいなぁ歩きたいな~と思ったけれど、チェックアウトする頃には30℃くらいになっているはずなので、今回はやめておこう。

朝食は和定食かと思っていたらバイキングだった(その日の状況によって違うらしい)。

冬瓜と油揚げの煮物、しょうゆ豆(?)、鯉の旨煮、ふかし茄子、セロリの甘酢漬け、おやき、卵焼き、焼き魚、とろろ、自家製豆腐。どれも濃すぎない上品な味付けで美味しい。お味噌汁はキノコなどの野菜がたっぷりで具沢山。グラタンやカレーなど、洋食系もあった。
最近の物価高騰で果物がなかなか買えないので、ここぞとばかりにスイカをたくさん取ってしまった。

ふと気づくと最後の1人になっていて、片付けのお邪魔になっている感がありありだったので、そそくさとスイカを食べて退出した。
朝食会場のスタッフさんたちは目立たず静かにお片付けしている割にとても手際が良く、空いた席はあっという間にキレイになる。お陰で窓際席に座れたので有難かった。

朝食後に庭を散歩してみたら、サルスベリの花が美しく咲き誇っていた。

この庭には桜の木もあるらしいので、春に庭の足湯に浸かりながら桜を眺めるのもいいだろうな~。
戸倉近辺はあんずの名産地でもあり、あんずの花の季節に周辺を散策しても楽しそう。収穫の季節に来れば生のあんずが食べられるということで、それもちょっと食べてみたい。
そういえば、戸倉上山田温泉は近くにメジャーな観光地がないからか、このご時世に外国人観光客の姿を全く見かけなかった。いいお湯に浸かって静かに過ごせる、なかなか穴場な温泉地だと思った。
今回は暑すぎて温泉街の散策もできなかったので、千曲川の川岸散歩ができる季節にまた訪れてみたい。

=Memo=
1泊朝食つき 11,700 yen
朝食@バイキング会場
Check in 15:00/out 10:00
温泉:アルカリ性単純温泉(pH8.65)
※清風園の宿泊料金は季節によって変動幅が大きい印象。普通ならハイシーズンと思われる8月は、なぜかとてもお得な設定になっていた。