風景館(山田温泉)

風景館は、過去に家族で泊まったとき本当に親切にしていただいて、今も良い印象が残っているお宿。ただ、何となく一人泊向きではないような気がしていたのと、タクシーを使わないとアクセスできないと思い込んでいたため(実際は路線バスもあったことが判明...)、再訪する機会がないまま相当な年月が経っていた。
それが、昨年ふとホームページを覗いてみたら、ものすごくそそられる料理プランが出ているうえに、今では小布施駅からの無料送迎サービスもある。
これは絶対に行かねば!と、久々にお世話になることにした。

小布施で下車するなら前から気になっていたカフェKUTENへ行ってみようと、送迎の時間より少し早めに駅に到着した。多少は雪が積もっているだろうという予想は裏切られ、雪は溶け残りがちらほら目につく程度。道路は乾いて歩きやすい状態だった。ポカポカ陽気で道端には福寿草の花が咲いていたりして、もう春っぽい雰囲気。歩いているうちに暑くなり、ダウンを脱いでしまった。

岩松院方面へ、てくてく歩くこと約30分でKUTENに到着。

店内は程よく賑わっていて、すぐに空席に案内していただけた。
ランチメニューのキッシュも美味しそうだったけど、初志貫徹でフルーツタルトにする。暑かったので、冷たいオブセ牛乳カフェオレとアップルパイタルトを注文した。

タルトには大きめにカットして歯応えを残した林檎がゴロゴロ入っていて、フルーツ感をたっぷり楽しめる。カフェオレも牛乳にコクがあって美味しい♪
タルトをほおばりつつ窓の外を眺めていると、木々の間を小鳥たちが飛び交っている。1羽が窓のすぐ外の古びた木のテーブルに舞い降りて、ヤマガラだと分かった。テーブルの上の雪をついばんで水分補給している模様。ヤマガラは野鳥なのに人懐こいところがあって、こんな風にすぐ近くまで来てくれたりするのが嬉しい。
野鳥を眺めながらのティータイムを満喫し、再び30分歩いて小布施駅へ戻った。

駅の案内所で待っていると宿の方が呼びに来てくださり、案内されたマイクロバスに乗り込むと、思ったより多くのお客さんが乗っていた。
やがてマイクロバスが出発し、小布施の市街地を抜けて松川渓谷へ近づくにつれ、周りの風景は雪景色に変わってゆく。小布施町と高山村ではこんなに季節が違うものか...とちょっと驚いた。雪化粧した木々が美しい渓谷に見惚れているうちに、30分ほどのドライブで風景館に到着した。

チェックインの順番が回ってくるまでロビーの椅子に座ってしばし寛ぐ。
渓谷が見晴らせる素敵なロビーなので、いつの季節に来てもその時々の景色が楽しめそう。
やがて私の番になってお声が掛かったので、フロントで食事やお風呂の説明を受けた後、鍵をもらって3階のお部屋へ。

部屋に入ると、オーソドックスな和室の真ん中へんに布団が敷いてあった。窓際の小さな丸テーブルと椅子以外にこれといった家具はないので、8畳の和室がとても広く感じられる。
暖房は床置型の電気ヒーター(風が出るタイプ)だった。
渓谷側の部屋ではないので、窓の外には通りが見える。使いやすい洗面台とトイレもあって、快適。

風景館には大浴場の他に無料の貸切露天風呂があり、露天風呂は1泊につき1回だけ30分間利用できる。ロビーにスケジュール表が置いてあって、入りたい時間帯に名前を記入しておくシステム。夜はライトアップされて風情がありそうだし、早朝も清々しくて良さそうだなぁと結構迷い、しかも四角と丸の2種類の浴槽があるので、どちらにすべきかさらに迷う。
悩んだ結果、明日の早朝1番に丸い方を予約して、まずは大浴場へ♪

脱衣所に掲示されていた分析書には「弱硫化水素臭を有す」と書いてあったけれど、浴室に入っても私の鼻では硫黄の匂いを感知できなかった。
身体を洗い、木曽檜で造られた浴槽のお湯に浸かってみると、ぬるめで心地よい温度。源泉はかなり熱いらしく、湧き水を加えて温度調節されている。試しに湯口から注がれている源泉に触ってみたら、瞬間的に指を引っ込めてしまうくらい熱かった。
無色透明なお湯の中にはフサフサした白いおがくずのような湯の花が大量にたゆたっている✨
フサフサの湯の花を眺めつつお湯に浸かっていると、なんだかすごく癒される。のぼせにくいお湯で長湯できると思ったら、途中で急激にのぼせてきたので、そのタイミングで上がることにした。
大浴場を出たところには、無料のヤクルトが入った冷蔵庫があった(1人1本まで)。

最後にヤクルトを飲んだのはいつのことだったろう...と思いつつ久しぶりに飲んでみると、お風呂あがりのヤクルトはやけに美味しく、身体にも良さそう♪
部屋へ戻る途中、ロビーの片隅にある無料のドリンクコーナーに立ち寄ってみた。
コーヒーマシンの他に色々なフレーバーティーと緑茶やデトックスウォーター(?)が置いてあり、ちょっとしたお菓子もあったりして、すごく充実したドリンクコーナー。

カップ&ソーサーも好きなデザインのものを選べて楽しい。
ドリンクは紙コップに入れて部屋へ持ち帰ることもできる。

色々なアイスキャンディーが入った冷凍庫まであるので、パリパリチョコ入りを1本いただくことに💛
さぁ食べようと窓際の椅子に座り、外の景色に目をやると、動き回っている野鳥がいる。肉眼では誰だか分からないな~残念と思っていたら、隣のテーブルに双眼鏡が置いてあるのを発見!

なんという粋な計らい✨と小躍りしたい気分で隣の席に移動して双眼鏡を手に取ってみると、どこのメーカーのものかは分からなかったものの、かなり性能の良い本格的な双眼鏡。今回は自前の双眼鏡を持参しなかったので、これはすごく嬉しい。コゲラが激しく木の幹をつついて木っ端をまき散らしている様子や、枝に止まってくつろぐシジュウカラの姿がくっきり見えた。シジュウカラはスサーッと翼を伸ばしてストレッチしたり、足で頭を掻いたり、とてもリラックスしていて可愛い。
あまりに居心地の良いロビーなので、アイスの後は紅茶とお菓子を取ってきて、かなり長いこと居座ってしまった。

そして、とても楽しみにしていた夕食の時間がやってきた。
地下の食事処へ降りると、案内されたのは個室だった。

今回予約したのは「体に優しいご飯プラン」という肉・魚不使用のベジタリアンコース。この日、このコースを予約したのは私1人だったようで、そのせいで個室になったのかもしれない。
早速、担当のスタッフさんが前菜を持って現れた。前菜は春菊・えのき茸・長芋・梅肉・とんぶりのお浸しで、菊の花びらが飾られている。繊細な出汁の旨味が素材の味を引き立てて、すごく美味しい!
続いて3段のお重が届けられた。1つ1つがプチサイズのバラエティ豊かなお料理を、お品書きを見ながら壱の段から順に味わうのが楽しい。

壱の段(右):大豆チーズ、茶巾南京、姫長芋唐揚げ、菊花かぶ、むかご松葉串。とろろの上にかかっているのはモロヘイヤ?(なぜかこれだけお品書きに記載がなく)

弐の段(左):白和え、焼き林檎、湯葉のべっ甲餡がけ
参の段(右):刺身こんにゃく・万能葱・黄菊、あけび味噌、甘酒蕪・金時人参甘酢

お重の次は、お吸物と湯葉のお刺身。
お吸物の蓋を取ると裏側には鶴の絵が描かれていて、わぁ可愛い💛と心が躍る。器にもこだわった洗練された盛り付けは、贅沢気分を高めてくれる。
湯葉刺しが載っている銀色のお皿は風景館が所有する最も高価なお皿なのだという小ネタの披露もあって、面白かった。)

お吸物の具材は豆腐と金時人参、ゆり根、三つ葉で、出汁にも動物性のものは使っていないそう。ベジタリアンの人が安心して食事を楽しめる温泉宿は数えるほどしかなさそうだから、このコースはかなり貴重かもと思ったら、やっぱり海外からのお客さんに人気だということだった。
そんな話の端々から、昨年登場したばかりのこのコースがかなりの自信作であることが感じられた。
続いて運ばれてきたのは田楽5種の焼物。3種類の生麩と里芋と豆腐に、それぞれ違う味の味噌がトッピングされている。生麩が大好物なので嬉しい♪

丁度良いテンポで次々と出来立てのお料理が運ばれてくるので、一番美味しい状態で味わえるのも素晴らしい。
コースも終わりに近づいてきて、揚物が届けられた。このあたりでお鍋にも火をつける。

揚物は、里芋の唐揚げ・蓮根の天ぷら・長芋の磯辺揚げを、葛でとろみをつけた柚子風味の餡につけていただく。片栗粉とは舌ざわりが違う上品なとろみが揚物の美味しさをレベルアップしてくれている。
根菜が色々入ったお鍋は味噌仕立て。でも、味噌汁とは違う複雑な味わいの滋味深いスープ。可能な限り最後までよそって飲み干した。
この時点でかなり満腹だったので、ご飯は少な目にしてもらった。それでも食べきれるか自信がなかったけれど、一緒に出されたとろろをかけると意外にもスルッと完食してしまった。

最後はオレンジの皮の器に盛りつけられた果物でサッパリと締めくくる。
ベジタリアンでなくても十二分に楽しめる素晴らしいコースだった✨

幸せな気分で部屋へ戻り、夜中にお風呂に行くまでちょっとひと眠りすることに。
...が、ちゃんと目覚ましをかけておいたのに、無意識に止めたのか、爆睡しすぎて気づかなかったのか、とにかく目が覚めたら23時45分だった💧
お風呂は24時までなので、今晩はもう無理。なんてこったー!と歯噛みをしつつも頭を切り替え、明日の早朝に大浴場と露天風呂をハシゴすることにした。

+ + + + + + 就 寝 + + + + + +

翌朝は5時に起床して、いそいそと大浴場へ。
今朝は昨日と違って湯の花がほとんどなかったので、夜間にお湯を抜いて入れ替えたに違いない。また夕方になると湯の花がたまってフサフサになるんだろうな。
このお湯は浸かっている時にはそれほどツルツル感を感じないのだけれど、乾いてから肌を触ってみると柔らかくスベスベになっている。美白効果もある気がする。そして代謝も上げてくれるようで、昨晩は暖房要らずのポカポカ状態だった。
大浴場で温まってから、いったん浴衣を着て露天風呂へ移動する。

小鳥風呂というネーミング、いいなぁ。運が良ければ近くの木に野鳥が止まってくれたりするんだろうな。
露天風呂には洗い場がなく、脱衣所も吹きっさらしなので、大浴場で温まってから来て良かった。お湯の温度は大浴場より少し高い感じで、冷たい外気と丁度良いバランス。

最初は肩まで浸かり、のぼせてきたら浴槽内の段差に腰かけて雪景色を眺めつつ、ゆったり湯浴みを楽しんだ。

朝食は昨晩と同じ個室にて。
席に着くと、豆皿に盛り付けられた色々なおかずが勢揃いしていて圧巻。

朝はお品書きがなかったので何者かよく分からない食材もあったものの、どれも出汁の味がよく染みていて美味しい。豆腐のお鍋に入っている透明のコリコリしたのは、白きくらげかな?
朝食だけで1日分の野菜が摂れたような気になる。

サラダと果物の間に置いてあるのはオイルと塩とレモンで、自分の好きな加減でサラダにかけて食べられるようになっている。
後からおかゆも出てきた。昆布の旨みが効いて味わい深いおかゆだった。

帰りの送迎車が9時30分発なので、朝はちょっと慌ただしい。
本当に居心地が良かったので、1泊ではもの足りないな...と思いつつ送迎車に乗り込んだ。お風呂にもっと入りたかったし、外の大湯にも行きたかったし、今度は連泊してロビーでゆったり過ごす中日を楽しみたい!

帰りは20分ほどで小布施駅に到着した。
せっかくなので、今日も別のお店でケーキを食べて帰る。1年半前の新栗シーズンに来た時は行列ができていて入店を諦めた栗の木テラスに、この日はすんなり入ることができた。

クラシック音楽がかかっている素敵な喫茶室で、念願の栗ロールケーキを注文。栗の木テラスは紅茶のラインナップが充実しているのも嬉しいところで、迷わずウバを選んだ。ポットで出されるたっぷりの紅茶と共に栗ロールケーキを味わい、至福のひととき💛
月曜の朝からケーキを食べにくるような酔狂な客は他におらず、食べ終えて店を出るまで喫茶室には私1人だった。

とても久しぶりに再訪した風景館は、ナチュラルに親切な接客はそのままに、色々と進化を遂げているように見えた。他にも1人客が数名いたようだったし、1人泊向きではないという印象は完全に間違いだった。
このたび会員になったので、今後お得な情報など送られてくると思うし、次回は絶対連泊しよう!

=Memo=
1泊2食つき 21,150 yen
夕食@食事処、朝食@食事処
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(pH7.4)

 

鉄鉱泉本館(下諏訪温泉)

昨日の蓼科湖に続いて、今日は諏訪湖で鳥見をする。
お目当てはミコアイサ。ラッキーなことに蓼科湖で会えてしまったので満足してはいるものの、せっかくなので当初の予定通り諏訪湖にも行ってみようと思い、茅野駅から岡谷駅へ移動した。
諏訪湖から天竜川へ水が流れ出す釜口水門というところにミコアイサがよくいるという情報を目にしていたので、岡谷駅で下車した後はまっすぐ釜口水門を目指す。
まずは駅を出て左手に進み、しばらく歩いて線路下をくぐると、頭上に岡谷ジャンクションという壮大な高架橋が現れた。
真下から見上げると軽く眩暈を覚えるようなスペクタクル感。よくもまぁこんな高いところにこんな巨大な橋を造ったものだ...と圧倒されつつ通り過ぎ、よし!これで川岸に出られたと思ったら、目の前に通行止めの立て看板が💧

なにやら工事をやっているらしいけれど、お昼時だからか人の姿はなく、工事も中断している模様。
人がひとり通れる程度の隙間があったので、歩行者は通ってOKなのか?としばし悩み、えぇい、行ってしまえ!と先へ進むことにした。
が、反対側まで行くと完全封鎖されていて出られない状態だったので、仕方なく横っちょのガードレールを乗り越えて脱出した。人っ子ひとりいない工事現場で不審者と化す自分...
後で調べてみたら岡谷駅には出口が2つあり、南口から出ればこんな大回りして線路を越えたり工事現場を突破する必要もなかったのだった。
でも、大回りしたお陰で岡谷ジャンクションを真下から見れたのは楽しかったので、良しとしよう。
これでようやく川岸に出られたものの、歩行者にとっては歩きづらい道路で、なぜか川側には横断歩道がないため、交差点に着くたびに道路の反対側に渡り、横断歩道をコの字型にこなして川側に戻らなければならない。
無駄な信号待ちを繰り返しつつ前進を続けると、ようやく川岸に遊歩道らしきものが現れ、釜口水門が見えてきた。

そして、水門の少し手前の川面にミコアイサの群れがいた。

小さすぎて証拠写真にもならないけれど(しかもピンボケ)、こんな感じの場所にいたのだ!ということで。
蓼科湖にはオスが2羽のみだったけれど、こちらにはメスもいる♪
総勢20羽くらいの群れが、川岸からジロジロ見ている私を警戒する様子もなく、のんびりと川の流れに身をまかせている✨
ほとんどのオスが完全無欠なパンダガモ姿でキメているけれど、中にはまだエクリプス末期なのか変なまだら模様のオスもいる。くりくりした茶色い頭のメスも可愛いな~。
蓼科湖よりかなり近い位置からクッキリ見ることができて、やっぱり来て良かった!と大満足。
周りには全く人がいなかったので、落ち着いて心ゆくまでミコアイサたちを眺めることができた。

十分観察して満ち足りた気分で水門を越え、諏訪湖側に出ると、こちらにはもうミコアイサはいなかった。
このまましばらく湖畔を歩くことにしたけれど、相変わらず今日も底冷え。道端の電光掲示板に0℃と表示されているのが故障中でないとすれば、やはり相当な寒波がきているらしい。
それにしても諏訪湖は広いなぁ。

湖面に張り出している木の枝に何かの鳥が止まったので双眼鏡で見てみるとモズだった。
自宅近辺で普通に見られる鳥も、素敵なロケーションで見ると風情があって絵になる。
芝生の上を歩いていたら、前方の木の根元でカルガモヒドリガモが草を食べていたので、お邪魔しないよう舗装道路に戻り、少し離れたところから観察を楽しんだ。

ヒドリガモは顔立ちが優しげで鳴き声も可愛いので、会えると嬉しい。そういえば以前来たときも、こんな風に群れで草を食べていたっけ。
さらに歩いていくと、諏訪湖の水鳥の案内板があった。

この地点は特に水鳥が多いようで、湖面にたくさんの鳥たちが浮かんでいたので、どれどれ...と双眼鏡を覗いてみたら、ほぼ全てがカンムリカイツブリだった!
これまでカンムリカイツブリは1~2羽で泳いでいる姿しか見たことがなかったので、こんな大群になることもあるのかと驚いた。右も左もシレッとした表情のカンムリカイツブリだらけで、ちょっと笑ってしまう光景。いいものを見た。

ここまで楽しく鳥見散歩を続けてきたけれど、さすがにだんだん寒くなってきた。
日が差している間は良いのだけれど、雲が多くなると風の冷たさが身にしみる...
もう少し歩けばランチが食べられるお店がいくつかあるはず、と思いつつ歩き続けるものの、なかなかその地点に到達しない。諏訪湖の広さをちょっと甘く見ていたかも💧
今回は2泊分の荷物を背負って歩いているので、疲れてくると荷物の重さもこたえてくる。寒いし重いしお腹もすいたしで、早くどこかのお店に入りたい!ということしか頭に浮かばなくなってきた。それでも閑散とした湖畔の道はまだまだ続く。
黙々と歩き続け、もう疲れて1歩も歩きたくない気分になってきた頃、ついに事前に目星をつけておいたカフェ プッカに辿り着いた。

閉店まであと30分もない感じだけど、大丈夫かな...と思いつつドアを開けてみると、普通に迎え入れてくださった。とりあえずホッとする。
カウンターの他にはテーブル席が1ヶ所あるだけの小さなお店。ランチタイムはとっくに終わっていたけれど、単品の食事メニューがあったので、ボルシチペリメニとパンを注文した。しばらく待って料理が出てくると、写真を撮る気力もなく、すぐにガツガツと食べ始めてしまった。
熱々のボルシチが冷え切った身体に染み渡る。あぁ、なんて美味しいんだろう✨と無心に食べ続けた。醤油と辛子が添えられた和風のペリメニも優しい味わいで、あっという間に完食。ハイジの白パンみたいな小ぶりのパンは自家製らしく、ふんわり柔らかい。
カウンターの向こう側では専用のマシンでパン種らしきものがポテポテこねられている。その様子がなんとも可愛らしく、ぼーっと眺めているうちに疲れが癒されてきた。
閉店まぎわに飛び込んで食事を注文した迷惑な客を急かせる空気は一切なく、ゆったりと時間が流れるこのお店の暖かい雰囲気は、店主さんの人柄によるものかなと思えた。
美味しい食事と癒しオーラで元気が出たので、あと一息がんばって下諏訪の温泉街まで歩くことにした。
道を間違えて無駄に体力を消耗したくなかったので、念のため店主さんに道を確認すると、丁寧に地図まで書いて説明してくださった。
カフェ プッカさん、本当にありがとうございました!

教えられた通りに歩いていくと、下諏訪駅は割とすぐだった。ここまで来れば温泉街までの道のりは大体見当がつく。
特に迷うこともなく、鉄鉱泉本館に到着できた。

明治37年創業というだけあって、レトロな風情が漂うお宿。
ちょうど同じタイミングでやってきたお客さんが1組いたので、その方々が案内されている間しばし座って待っていると、やがて女将さんが戻って来られた。
チャキチャキした元気な女将さんに先導されて幅の狭い階段を上り、今宵の部屋「羽衣」に到着。

部屋の入口はドアではなく、施錠できる引き戸になっている。
中に入ると、既に布団が敷かれていた。

カーテンが閉め切られていて解放感とは無縁のお部屋。炬燵や空気清浄機のコードのせいか、やや雑然とした印象もある。
でも、スッキリ整いすぎていないところが逆にいい感じで、まったりと落ち着ける雰囲気。炬燵でくつろいでしまうと部屋から出たくなくなる。
トイレと洗面所は部屋の引き戸を出た外にあった。

予想外に近代的なトイレで、足元にはセンサー式のヒーターが設置されている。中に入るとすぐにスイッチが入り、暖かくなる。
洗面台の前には藤椅子が置いてあり、こちらにもヒーターがある。蛇口をひねると、ほんのり温かいぬるま湯が出てきた。(ひょっとして温泉なのかな?)
さっきの階段を上った先には羽衣の部屋しかないので、このトイレも洗面台も羽衣専用。ヒーターをつけて籐椅子に座りながら歯磨きなどできて、すごく快適♪

のんびりしすぎて炬燵で寝落ちする前に、温泉へ浸かりに行くことにした。
温泉は男女別の内湯が1ヶ所のみ。脱衣所にもセンサー式のヒーターがあって、寒い思いをしなくて済む。

こちらのお風呂は「旦過の湯」という源泉を加水なしでかけ流しており、かなり熱いという評判。女将さんからも「よくかけ湯をしてから浸かってください」と念押しされていたので、覚悟して浸かってみたら、予想外に丁度良い温度だった。寒波のせいでかなり気温が下がっている影響で、いつもより湯温が低いのかもしれない。特に匂いのないお湯で、とてもまろやかな肌ざわり💛 すぐに肌がつるつるになった。
浴槽は真っ黒に見えるけれど、若草石という石で造られているそうで、底の方をよく見れば確かにちょっと緑色だった。湯口の隣にはお茶目なカエルがいる。
洗い場のシャワーのお湯まで温泉なので、湯量はかなり豊富そう。
絶妙な温度な上に、のぼせにくいお湯だったので、長い間ゆっくり浸かることができた。あぁ極楽。。。

浴室と羽衣の部屋は近い位置にあり、ささっと温泉に浸かりに行けて便利だった。
部屋に戻って引き戸を開けると、最初の小部屋に吊るされている灯りが素敵。この灯りが醸し出す陰影は時代小説の中に入り込んだような気分にさせてくれて、見るたびにうっとりする。

部屋で髪を乾かしていると、宿の方が湯たんぽを持ってきて、布団の中に仕込んでくださった。
古い建物だから館内全体に暖房を効かせるのは難しいのだろうけれど、お客が寒い思いをしないようにという配慮が随所に見られて、優しいお宿だなぁと思った。
炬燵の上には緑茶と湯呑の他にカップ&ソーサーとカフェオレスティックが置いてあったので、カフェオレを飲みつつ、持参したパンで夕食にした。

この頃になって、左肩に変な痛みがあることに気づいた。嫌な予感...と思っていると、その予感は的中し、痛みがどんどん増強してきて50肩状態に💦
やっぱり重い荷物を背負って長時間鳥見をしたのがマズかったのかも。鳥を観察する時は変な姿勢で双眼鏡を構えて、その姿勢をキープしないといけなかったりするから、かなり身体に負担がかかったのかもしれない。
湯たんぽのお陰で布団がぬくぬくで嬉しい~♪でも肩が痛い~という複雑な状況でひと眠りし、また夜中に温泉へ浸かりに行った。

+ + + + + + 就 寝 + + + + + +  

翌朝も、アイタタタ...と顔をしかめつつ階段を下りて、まずは温泉へ。
お湯に浸かっている間は不思議と痛みも和らぐ感じ。急性の症状がある時は温泉に浸からない方が良いのかもしれないけど、本人が心地良く感じているのだから、その感覚を信じることにする。
そして朝食を頂きに食事処へ。各テーブルの間には衝立があって、プライベート感が確保されていた。ただ、一番遅い8時半でお願いしていたせいか、既に他のお客さんは誰もいなかった。

テーブルの上にはお品書きがあり、女将さんからも詳しく説明してくださった。

山菜三種盛り(山くらげ炒め煮・わらびのシーチキン和え・ふき味噌クルミ和え)は、どれも歯ざわりが良くて美味。
諏訪湖産わかさぎの唐揚げは甘辛い味つけ。こんな可愛いサイズのわかさぎは初めて食べた。
大きな温泉卵はとてもフレッシュな感じで、つゆが薄味なのも嬉しい。
自家製のカスピ海ヨーグルトは、底の方にシャリッとした蜂蜜が入っていた。

途中で熱々のお味噌汁が出てきた。お味噌はご近所の味噌蔵のものを使っているのだそう。
漬物は野沢菜とキクイモ。爽やかな味わいのキノコのおろし乗せ。
湯豆腐にも地元のお豆腐屋さんの木綿豆腐が使われている。木綿のわりになめらかで大豆の味が濃い豆腐だった。
お米は諏訪湖盆地産ひとめぼれ。
地のものを使って手作りされたクオリティの高い朝食を美味しくいただきながら、お料理を運んで下さったフレンドリーな女性と雑談もして、和やかなひとときを過ごせた。

今回は不運にも50肩に見舞われて100点満点の滞在にはなれなかったけれど、鉄鉱泉本館は不思議な懐かしさを感じさせてくれる、こぢんまりとした人情味のあるお宿。お湯もとても良かったし、お気に入りの宿がまたひとつ増えた♪

=Memo=
1泊朝食つき 12,700 yen
朝食@食事処
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(pH値不明、アルカリ性

TINY GARDEN 蓼科

冬の蓼科湖は個人的に大好きな探鳥スポット。ほとんど人がいない湖畔でひっそりと鳥見が楽しめるし、何と言っても蓼科湖は小さいところがいい。
警戒心の強い水鳥は湖の真ん中へんにいるため、大きい湖だと双眼鏡レベルでは観察できないけれど、蓼科湖くらいの大きさなら真ん中へんの鳥たちもそこそこ見ることができる。
数年前の同じ時期に訪れて初めて出会ったカワアイサにまた会いたくて、蓼科湖畔に1泊することにした。

折しも寒波が到来していて、茅野駅で降りると晴れなのにチラチラと小雪が舞っている。
まずは腹ごしらえをすべく、駅近にある馬肉専門店のさくらさくへ行ってみた。

予約してないと無理かな~と思いつつお店に入ってみると、オフシーズンだからか空いていて、すぐにカウンター席に通して頂けた。
ユッケ丼やステーキ丼など魅惑的なメニューが色々あって目移りしてしまうけれど、やっぱり王道の馬刺し定食にしよう♪

さっぱりしたモモ肉の馬刺しを3種類の薬味(わさび・おろし生姜・にんにくスライス)で味わう。肉じゃがの小鉢がついているのも嬉しい。
おろし生姜が一番好きだけど、にんにくも意外と爽やかな風味で合うなぁ。
久々に馬刺しが食べられてすごく満足。やっぱり美味しい💛
先週約4年ぶりに風邪をひいてしまい、病み上がりで弱っていた身体に力がみなぎる気がした。

食事を終えて店を出た後、駅のおみやげ売場で塩羊羹やおにぎりなどを買ってからバス乗場へ。ベンチに座ってしばらく待つと北八ヶ岳ロープウェイ線のバスがやって来た。バスに乗ると25分ほどで蓼科湖に到着。

蓼科湖の周りは道が整備されていて歩きやすい。
チェックインにはまだ早いので、まずは双眼鏡を取り出して鳥見を楽しむことにした。
最初に目に入ったのはカルガモオオバンだった。意外とカモの姿が少ないなぁと思いつつ進んでいくと、徐々にコガモキンクロハジロの姿が見えてきた。
湖の対岸あたりまで来ると、マガモの群れとホシハジロの群れがいた。
蓼科湖からは横谷峡へ続く散策路に入ることもできる。いつか横谷峡も夏鳥の季節に歩いてみたい。

さらに先へ進むと、湖の真ん中へんにカワアイサの群れがいるのを発見した。やっぱり来てくれていた♪
カワアイサは体格が大きめで、真っ白な胴体部分が遠くからでも目立って見える。
オスは特徴的な形の深緑色の頭にスッと伸びたオレンジ色のクチバシがスタイリッシュ✨
一方、メスは茶色い頭がなぜかボサボサしていて、それがなんとも可愛い感じ。
前に来たときは数羽しかいなかったのに、今日はざっと数えて40羽くらいいる!
湖畔にはベンチや東屋もあって、のんびり座って鳥を眺めることができる。

周りの木々からも色々な小鳥の声が聴こえてきて、姿は見つからなかったけどシジュウカラコゲラエナガカワラヒワジョウビタキなどがいるようだった。
それにしても寒波のせいですごい底冷え💧
しばらく鳥見をしていただけですっかり手がかじかんでしまい、双眼鏡のピントを合わせるのも大変になってきた。
そろそろチェックインの時間なので、いったん宿に入って暖を取ることに。

今回泊まるTINY GARDEN 蓼科はロッジとキャビン、キャンプ場で構成された施設で、アパレルブランドのアーバンリサーチが運営している。2019年にオープンしているけれど、新たに建設された訳ではなく、元々この場所にあった宿をリノベーションしたものらしい。
キャビンもなかなか素敵な雰囲気なのだけれど、やっぱりトイレがついていた方が良いので、ロッジの和室を予約しておいた。9畳の広々した和室は窓が2面あって、とても開放的。
エアコンの他にガスヒーターが設置されていたけれど、エアコンだけで十分暖かかった。

片方の窓の外には隣の建物が見えるだけで、別荘地の中にいるような気分。
もう片方の窓からは湖が眺められる。

トイレと洗面所はクールなグレー系の色調。

部屋に用意されていた薄手タオルがTINY GARDENのロゴマーク入りでお洒落。いつもはこの種のタオルには手をつけないのだけど、作りもしっかりしているので欲しくなり、珍しく使わせてもらうことにした。
壁のフックにはトラックの幌をリサイクルして作ったという真っ赤なバッグが掛かっていて、「ご自由にお使いください」と書いてある。

こんないいものが用意されている一方で、ちょっと残念だったのは浴衣がなかったこと。温泉旅館というよりはキャンプ施設という感じの宿なので仕方がないのかもしれないけれど、アパレルブランドらしいお洒落な館内着などあったら嬉しいなと思った。

しばらく部屋にいたら身体が温まってきたので、真っ赤なバッグを持って再び鳥見散歩に出かけることに。

湖畔に戻ると、さっきのカワアイサの群れに1羽だけミコアイサのオスが混ざっていた!
ずっと会いたいと願っていたミコアイサが蓼科湖に来てくれたとは✨
カワアイサたちと一緒にいるとミコアイサは小さくてパンダ顔で、反則級に可愛い…。
やっぱり色々な鳥に会うには時間帯を変えて来てみるのが大事だな~と痛感した。
思いがけない出来事でルンルン気分になりながら湖畔を半周し、バス停近くにあるケーキ屋さん「たてっくる」でティータイムにすることに。

ラズベリーソースが添えられた洋梨のシーブストとカプチーノ
美しい盛り付けで、もちろんお味もとっても美味しい♪
静かな湖畔を眺めながら幸せなティータイムを過ごし、やっぱり冬の蓼科湖はいいなぁと思う。夏や紅葉シーズンはきっともっと混んでいて、印象がかなり違いそうな気がする。
食べ終わる頃にはそろそろ暗くなって来たので、夕暮れの湖の景色を味わいつつ宿に戻った。

今回は湖畔に泊まることが最優先だったので温泉はなくてもいいかと思っていたのだけれど、TINY GARDENには温泉もある。冬の鳥見で冷えた後に浸かる温泉は、やっぱり嬉しい。

浴室に入るとうっすら塩素臭がしたけれど、循環ろ過のお湯であることは分かっていて過度な期待はしていなかったので、特に不満はなく。
サラサラした感触でクセのない弱酸性のお湯で温度も丁度良いので、ずっと浸かっていたくなる。
ただ、なぜか蓼科のお湯は皮脂を洗い流す作用が強い気がするので、あまり長湯はしないようにした。(それでもすぐに指先がパサパサになった。)

お風呂の後は、部屋の前にあるちょっとした図書コーナーで八ヶ岳ライフの本や料理本を選び、のんびり読書を楽しむことに。

この部屋にはテレビがないところが静かな湖畔のロケーションに合っていてとても良い。
「赤松のお茶」というちょっと変わったティーバッグが置いてあったので、それを飲みつつおにぎりを食べた。確かにふわ~と松の葉の香りが漂う、不思議な感覚のお茶だった。
この後はもうお風呂にも行かず、健康的に早寝した。

+ + + + + + 就 寝 + + + + + +

朝6時すぎに目覚めると、空はうっすら白み始めており、カモたちがグァグァ鳴く声が湖から聴こえてくる。このひとときを味わうためだけにでも湖畔に泊まりたい!と思うほど、冬の朝の湖畔の雰囲気が好き。
朝もちゃぽんとお風呂に浸かってから、朝食を頂きにレストランへ。

レストランの片隅では薪ストーブに赤々と火が燃えていて、とても雰囲気がいい。
窓際に並べられたジュースやコーヒーはセルフサービスで、食事はワンプレートで提供される。

この日のワンプレートのお料理は、地元野菜のリーフサラダ、塩ベーコン、豆腐フリット、季節野菜のキッシュ、自家製鶏ハム、キャロットラペ、豆乳味噌グラタン(真ん中の丸いやつ)、デザートのりんご。
パンかご飯、豚汁か野菜スープが選べるようになっていた。
どれもこれもとっても美味しい💛 特に、驚くほど柔らかい鶏ハムと、さつまいもなどの野菜とたっぷりチーズが入った豆乳味噌グラタンが絶品だった。
お願いすれば色々とおかわりもできるようだったけれど、ちょうど良く満腹になったので、今回は遠慮しておいた。
でも、食欲モリモリな体調の時だったら是非ともおかわりしたい!と思う素敵な朝食。

チェックアウト後、バスの時間まで1時間ほど間があったので、最後の鳥見を楽しんだ。

昨日は姿が見えなかったカワラヒワジョウビタキが、よく目につく木の枝の先に止まっていた。
マガモたちは朝日を浴びて、緑色の頭が艶やかなビロードのように輝いている。
カワアイサ御一行と行動を共にしていたミコアイサが、今日は2羽に増えていた。いつ合流したんだろう。
湖の上空には時折カモたちを狙う猛禽が現れるので、その気配を察知したのか、急にカワアイサたちが一斉にドボンドボンと水に潜り始めた。一糸乱れぬ集団行動が圧巻で面白い。
対岸を眺めると、水際にゴイサギチュウサギダイサギかも?)がうっそりと佇んでいる。
本当に色々な鳥たちが集っていて、いつまでも眺めていたいけれど、残念ながらバスの時間になってしまった...
また今度来た時にはきっと新しい顔ぶれの鳥たちに会える気がするので、再訪するのが楽しみ。

=Memo=
1泊朝食つき 14,540 yen
朝食@レストラン
Check in 15:00/out 10:00
温泉:泉質不明(pH5.25)
   「温泉法第2条に規定する温泉資格を有す」という謎の記載だった💧

野地温泉ホテル(野地温泉)

今年の夏はいつまでも暑かったけれど、9月の下旬にさしかかった頃からようやく涼しくなり、温泉が嬉しい季節がやってきた。
久しぶりに白濁系の硫黄泉に浸かりたいなぁ!と思い、かねてから行ってみたかった野地温泉ホテルを訪れてみることに。
福島駅から無料送迎バスに乗って約50分。標高1200mに位置する野地温泉までの道のりは車窓からの景色も楽しめ、黄色く色づき始めた木々が霧の中にぼやけて見える様が幻想的だった。
到着してバスを降りると、辺りには硫黄の匂いが立ちこめている💛

送迎バスで到着したお客さんが一気にフロントへ押し寄せたので、少し待ってチェックインを済ませた後、自分で荷物を持ってレトロ感漂う廊下を歩き、2階のお部屋へ。

6畳のこぢんまりした部屋だけれど、見晴らしが良いので狭い感じはしない。
トイレも洗面台も備わっており、申し分なし!

 

野地温泉ホテルにはお風呂がたくさんあって、しかも3時間ごとに男女の入れ替えがあるため、どういう順番で入ろうか...と作戦を練っているうちに頭がこんがらかってくる。
お茶とお菓子で一服しつつひとしきり考えてみたものの、結局なりゆきに任せることにした。

まずは、いつでも入れて洗い場もある大浴場へ行こう♪
白濁系硫黄泉が大好きだけど、これが強酸性だと残念ながら肌に合わず、たいていブツブツが出てしまう。でも、野地温泉はpH6.1なので安心。
やや青みがかった乳白色のお湯に身を沈めると、比較的ぬるめの温度が絶妙で、思わず笑みがこぼれる気持ち良さ。肌あたりが本当に柔らかい極上のお湯で、いつまででも浸かっていられる。ゆで卵臭とはちょっと違う、煙のような、鉄のような匂いが溶け込んでいる感じも良い。
露天に移ってみると、こちらはさらにぬるめ。硫黄の匂いを満喫しつつ、ここに来て良かった...と大満足で最初の湯浴みを終えた。

部屋へ戻ってくつろいでいると、自分自身から硫黄の匂いが立ちのぼってきて幸せな気分に包まれる。湯あがりの肌は少し粉っぽい感じのすべすべ感。
末端の毛細血管が拡張して巡りがよくなったらしく、いつもは冷たい手足の指先がポカポカになっている。そして、このポカポカは夜中まで続いていた。すごい効き目だ...。

夕食は広間にて。
野地温泉ホテルの客層はやや年齢層高めのグループ客が多い印象で、ひとり客はほぼいない。外国人観光客も皆無のように見えた。
席に着くと、あらかじめ大体の料理がセットされていた。

会津巻と里芋の煮物、くるみ豆腐、にしん山椒漬け、柿の器の中身は焼き穴子のみぞれポン酢和え。

鮪とサーモンのお刺身に、紙のようにうす~く切ってモミジの型で抜いた大根が被せてあり、お洒落な趣向。茶碗蒸しにはカボチャ饅頭が潜んでいて食べ応えがあった。

鶏肉のお鍋には色々な種類のキノコがたっぷり入っていて、特に黒っぽくて丸いキノコがトロッとして美味しかった。(初めて食べるキノコで名前が分からず)
朴葉味噌焼きの牛肉も柔らかくて嬉しい。
全体的にサッパリした味付けで好みの料理ばかりだったものの、やはり小食人間にはちょっと量が多く、途中で苦しくなってしまった。。。
この後に続く汁物やデザートを辞退すると、明日の朝食の時にデザートを出して下さるとのこと。大勢のお客さんがいるのに、そんなきめ細かい対応をして頂けるとは驚き!

部屋に戻ると布団が敷かれていたのでバタンキュー✨
食後に電車に乗って家に帰るという面倒がなくて、つくづく宿は最高だなぁと思う。

寝落ちして目覚めると夜中だった。
ちょうどいい塩梅に一番入りたかった千寿の湯が女湯に切り替わるタイミングだったので、1時過ぎに出かけてみた。

館内は静まり返っており、誰ともすれ違わなかったので、これはきっと独泉できる...と期待が高まる。

浴場に入ってみると、やはり誰もいなかった。
鄙びた風情の浴場に源泉が注がれる音だけが静かに響いている。
源泉が流入している一番奥の浴槽はかなり熱めだったので、手前のぬるめの浴槽に入った。この素晴らしい空間を独り占めできるとは、なんという贅沢だろう。。。
静寂の中、夢見心地で極上の湯を堪能した。
千寿の湯の一画には休み処もあり、のぼせてしまったらここでひと休みすることもできる。窓のデザインも素敵で、明るい時間帯にはまた違った風情が楽しめそう。

* * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * *

翌朝は早めに起きて、朝食前に天狗の湯で最後の湯浴みを楽しむ。

天狗の湯は内湯の浴槽から引き戸を開けて露天に出られる面白い作りになっているのだけれど、なんとなく一度上がってから普通に露天へ移動してしまった。せっかくだから直接内湯から外に出てみれば良かった...と、あとから後悔。
1泊では全てのお風呂に入りきれず、ちょっと残念だったけれど、今回入れなかった鬼面の湯は次回のお楽しみにするとしよう。

朝食も昨晩と同じ席にて。

イカの塩辛、焼魚、紫蘇巻き、明太子...と、ごはんのお供に嬉しい顔ぶれが揃っている♪
塩辛は変に甘ったるくなく、とても好みの味だった。

豆乳仕立ての湯豆腐と熱々のお味噌汁。
昨晩満腹で食べられなかったデザートの桃のムースも持ってきて下さった。正直、多忙にまぎれて忘れられてしまうだろうと思っていただけに、ちょっと感動。
朝はパクパク完食できて気分も上々♪
チェックインの際、Web予約特典ということで500円分の買物券を頂いていたので、これを使って食後のモーニングコーヒーを楽しむことにした。

ちょっとくすんだ色合いのレトロなロビーで出して頂いたコーヒーは、苦みと酸味がしっかり感じられるタイプだった。カップ&ソーサーもなんだか懐かしい感じのデザイン。
野地温泉ホテルは、奇を衒わずオーソドックスなサービスをきちんと提供している感じがとても良いと思った。出発の前日には確認の電話があり、当日はイベントが開催される都合で送迎バスが駅前に短時間しか止まれないことなど丁寧に説明して下さった。初めて泊まる宿の場合、送迎バスに乗り損ねる恐れが頭をかすめるので有難かった。
コーヒーを飲み終えた後、外に出て少しだけ辺りを散策してみた。

ホテルの裏手から源泉の湯けむりがモクモクと上がっていて、いい雰囲気。
この辺りは霧が出やすいエリアのようで、この日は基本的に晴れだったけれど、時折サーッと霧が出て雨がパラついていた。
近くにはハイキングコースもあるらしく、部屋に地図があったものの、野生動物が出没する可能性があるので1人で歩くのはお薦めしないと書いてあった💧
近年、あまりの暑さで避暑地がなくなりつつあるけれど、ここなら標高1200mだから夏でも涼しいかもしれない。(万が一涼しくなくても、部屋にエアコンがついていたので問題なし)
今回は1泊しかできなかったので後ろ髪を引かれつつ、また来よう!と心に誓った。

=Memo=
1泊2食つき 18,300 yen
夕食@広間、朝食@広間
Check in 14:00/out 10:00
温泉:単純硫黄温泉(硫化水素型)(pH6.1)

清風園(戸倉上山田温泉)

このところ何だか仕事が忙しく、休暇の予定を入れにくい日々が続いていた。そんな中、ようやく隙を見つけて休みを取ったら運悪くお盆休みの時期に重なってしまい、宿はどこも満室。
せっかく休めるのに温泉は無理か...と悲しく諦めかけたとき、奇跡的にも清風園に空室があるのを発見した。
清風園は機会があれば泊まってみたいと思っていた宿で、何となく先延ばしになっていたのだけれど、ついにその機会が巡ってきた!

清風園がある戸倉上山田温泉は、今回初めて訪れる温泉地。
最寄りの戸倉駅は、上田駅からしなの鉄道に乗り換えて15分強なので楽にアクセスできる。
歓楽的な色合いの強い温泉街がちょっと寂れてきているらしい、という印象を持っていたのだけれど、実際のところどんな感じなのか興味を引かれつつ戸倉駅に降り立った。
改札は無人だったけれど、そこそこ降りる人もいて、それほど寂れた感じではない。
この日は台風が通過した直後で、晴れたり曇ったり不安定な空模様だった。

まずは遅めのランチを取るべく、茅葺屋根が素敵なお蕎麦屋さん「萱」へ向かう。駅から歩いてすぐのところにあるので、迷わず辿りつけた。お盆の時期にありがちな臨時休業でもなく、ちゃんと営業しているのを見てホッとする。

既に1時半を回っていたけれど、人気のお店らしいので待っているお客さんがまだ数組いた。とは言え、お蕎麦だから回転は速いようで、名前を記入して待っていたら10分か15分くらいで席に通して頂けた。
遅い時間なので売り切れのメニューもあったものの、それほどこだわりはないので、選べる中から「千曲そば」と「二種キノコ天ぷら」を注文した。

細めで硬すぎない上品な感じのお蕎麦を、普通のつゆ+とろろ+くるみだれの3つの味で楽しめる。つゆ→とろろ→くるみだれと順番に食べ進めると、くるみだれが甘くないタイプですごく好みだったので、結局ほぼ全量のお蕎麦をくるみだれで食べてしまった。
キノコの天ぷらは舞茸と山伏茸と書いてある。山伏茸って初めて食べる気がするけれど、どんなキノコなんだろう?とワクワクしながら齧ってみたら、かなり繊維が多い、ちょっとエノキダケに似た感じだった。でも明らかにエノキダケとは違う独特の食感で美味しい。舞茸と交互に味わい、結構ボリュームがあったけれど、空腹だったのであっという間に完食した。

お会計を済ませた後、お土産売場を物色していると日本酒の試飲をお勧めされたので、喜んで味見させて頂く。
このお蕎麦屋さん、元々は造り酒屋だったのだそうで、そういえば入口の軒先に杉玉が吊るされていた。
女性に人気という口当たりがまろやかなタイプと、度数が強くインパクトのある原酒。どちらも美味しく、なんだか得した気分♪
韃靼そば茶と干しあんず、季節限定ももプリンをお買い上げして店を後にした。

駅へ戻ると雨がパラパラ降り始めた。そこへちょうどよく早めに循環バス(ほっとバス 上山田線)がやってきたので、バスに乗り込んで雨宿りしつつ出発を待った。
この循環バスは一般的な宿のチェックイン・チェックアウト時間に合わせて走ってくれているので助かる。
7分ほどバスに揺られ、宿の最寄りの停留所「上山田温泉公園」で降りると、雨は止んでいた。
適当にこっちの方だろうと歩き始めたものの、なかなか着かないので、仕方なくGoogleマップを取り出して確認すると、案の定逆方向に向かっていた。
やれやれと思い踵を返すと、再び雨が降り出し、あっという間にゲリラ豪雨となった。折り畳み傘を取り出して差したけれど、もはや傘など意味がない、バケツをひっくり返したような土砂降り。
方向音痴なんだから最初から地図を確認していれば...と自嘲しつつ歩き続け、水も滴る濡れネズミ状態になって宿に辿り着くと、入口付近にいたスタッフさんがすぐに寄ってきて荷物を持ち、フロントに案内して下さり、タオルも持ってきて下さった。親切!

部屋に通された後、濡れた服を脱いで浴衣に着替えると、少し落ち着いた気分になった。

今回の部屋は、お得なコンパクト洋室。眺望が良くないということで、窓から見えるのは隣のホテルの屋上(?)だけれど、別に構わない。
トイレ・洗面ルームは爽やかな色調のタイルで、いい感じ♪
洗面台の左側にはお風呂もついているけれど、これは温泉ではなさそう。

ヨーロピアンな感じのデスクとクローゼットなのに、履物は下駄風で異彩を放っている(この履物はスリッパよりも脱げにくく、館内の移動に便利だった。)
デスクの天板もいい味を出しているし、コンパクトながら居心地の良いお部屋で気に入った。
その都度沸かすタイプのポットでお湯を沸かして緑茶を淹れ、濡れネズミになったダメージから立ち直るまでしばしくつろぐ。部屋に用意されていたお菓子は林檎パイと昆布のおつまみだった(シブイ!)

温かいお茶を飲んで元気が出たところで、ようやくお風呂へ入りに行くことに。
エレベーターで1階へ降りて、長い廊下を大浴場へ向かって歩いていくと、窓の外にはよく手入れされた庭園が広がっていて気分が良い。

大浴場は「萬天の湯」と「さざれの湯」が男女入れ替え制になっている。その他に有料の貸切風呂も3つあった。
この日は廊下のつきあたりにある「萬天の湯」に入った。(撮影禁止だったので、写真なし)

大型旅館だし満室のはずなので、お風呂も混んでいるだろうと思ったら、先客は4、5人だけで空いていた。
内湯には壁で仕切られた洗い場がたくさんあり、浴槽との距離も十分あるため、シャワーの水が浴槽に飛ぶ心配がなくて好印象。黒っぽい石で作られた重厚な感じの浴槽には無色透明の源泉がかけ流されている。身を沈めると、やや熱めの温度だった。
戸倉上山田温泉の宿は硫黄泉のところが多い印象だけれど、清風園はアルカリ性単純温泉なので、匂いも全くしないマイルドなお湯。すぐに温まってきてのぼせそうだったので露天風呂へ移動すると、こちらの方が少しぬるめでゆっくり浸かれた。
単純温泉なので、これといった特徴はないものの、しばらく浸かっていると肌がツルツルしてきて、じんわりといい湯だな~と思った。

お風呂から上がった後、脱衣所に飲泉用のウォーターサーバーがあったので、冷やした温泉水を飲んでみると、やはり匂いも味も特になくて飲みやすい。でも、普通の水とは違うまろやかさがあって美味しかった。
壁に貼ってあった温泉の説明を読んでみると、清風園は3つの源泉を所有しており、それが22℃~34℃なので加温しているものの、加水も循環もしていない。薬品等の使用なしと書いてあるので、塩素も入れていなさそう。「専門のスタッフが毎日、お風呂を磨いています」という記載もあり、お湯に対する真摯な姿勢が伝わってきて嬉しい。

お風呂の後は、ライブラリーに行ってみた。

清風園の館内は、どこへ行っても掃除が行き届いていて雑多な物が何もないので、心地良く過ごせる。
ライブラリーの本は客室へ持っていってもOKだったので、いくつか雑誌を選び、そのうちの1冊を椅子に座って読んでいたら、足があちこちむず痒くなってきた。
あんな穏やかなお湯なのに、泉質が合わずにブツブツが出たんだろうか?と怪訝に思いつつ部屋に戻り、浴衣の裾をまくって調べてみると、何のことはない、蚊に刺されまくっていた。
館内でこんな憂き目に遭うなんて、どこまで蚊を引き寄せるパワーが強いんだ、自分💧

今回は朝食のみのプランなので、この後は時間を気にせずダラダラ過ごせる。
冷房の効いた涼しい部屋のふかふかのベッドで雑誌を読んでいるうちに眠くなり、目覚ましをかけずに寝落ちした。

目覚めると空腹を感じたので、予め買ってきておいたパンで小腹を満たし、お風呂が夜1時までだったので、12時少し前に入りに行ったら誰もいなかった。
ひとり静かに露天風呂に浸かっていると虫たちの声が聴こえてきて、うっすら秋の気配が漂い始めていた。
夜の庭を眺めつつ、静まり返った長い廊下を歩いて部屋へ戻り、冷蔵庫で冷やしておいたももプリンを味わった。
プリンの上にゼリー層があり、ひとかけの桃(ちょっと硬め)がトッピングされている。意外と酸味もあって美味💛

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

最後の入浴は朝食前に行くことにして、「さざれの湯」へ。こちらは「萬天の湯」より少し小さい感じ。
早朝のお湯はツルツル感が強く、泡もたくさんついて、昨日より鮮度が良い気がした。
遅めの8時過ぎに最上階の朝食会場へ行くと、窓際席が空いていたので、千曲川を眺めながら食事を楽しむことができた。
千曲川は思っていたより川幅が狭く、穏やかに流れている。川に沿って遊歩道があり、散歩をしている人がいたので、いいなぁ歩きたいな~と思ったけれど、チェックアウトする頃には30℃くらいになっているはずなので、今回はやめておこう。

朝食は和定食かと思っていたらバイキングだった(その日の状況によって違うらしい)。

冬瓜と油揚げの煮物、しょうゆ豆(?)、鯉の旨煮、ふかし茄子、セロリの甘酢漬け、おやき、卵焼き、焼き魚、とろろ、自家製豆腐。どれも濃すぎない上品な味付けで美味しい。お味噌汁はキノコなどの野菜がたっぷりで具沢山。グラタンやカレーなど、洋食系もあった。
最近の物価高騰で果物がなかなか買えないので、ここぞとばかりにスイカをたくさん取ってしまった。

ふと気づくと最後の1人になっていて、片付けのお邪魔になっている感がありありだったので、そそくさとスイカを食べて退出した。
朝食会場のスタッフさんたちは目立たず静かにお片付けしている割にとても手際が良く、空いた席はあっという間にキレイになる。お陰で窓際席に座れたので有難かった。

朝食後に庭を散歩してみたら、サルスベリの花が美しく咲き誇っていた。

この庭には桜の木もあるらしいので、春に庭の足湯に浸かりながら桜を眺めるのもいいだろうな~。
戸倉近辺はあんずの名産地でもあり、あんずの花の季節に周辺を散策しても楽しそう。収穫の季節に来れば生のあんずが食べられるということで、それもちょっと食べてみたい。
そういえば、戸倉上山田温泉は近くにメジャーな観光地がないからか、このご時世に外国人観光客の姿を全く見かけなかった。いいお湯に浸かって静かに過ごせる、なかなか穴場な温泉地だと思った。
今回は暑すぎて温泉街の散策もできなかったので、千曲川の川岸散歩ができる季節にまた訪れてみたい。

=Memo=
1泊朝食つき 11,700 yen
朝食@バイキング会場
Check in 15:00/out 10:00
温泉:アルカリ性単純温泉(pH8.65)
※清風園の宿泊料金は季節によって変動幅が大きい印象。普通ならハイシーズンと思われる8月は、なぜかとてもお得な設定になっていた。

平湯館(平湯温泉)

過去に1度泊まってなかなか良かった平湯館がいつの間にか共立メンテナンスの傘下に入り、リニューアルされたことを知って、しばらく前から気になっていた。
なみなみと注がれた茶褐色のお湯がとても気持ちよかった、あの素敵な合掌風呂はどうなったんだろう?
それで、春旅キャンペーンでお得に泊まれる今、久々に訪れてみることにした。

平湯温泉へは新宿から高速バスを利用すると乗り換えもなく、交通費も抑えられて良いのだけれど、運が悪いと渋滞にはまったりもするので、今回は松本まで電車で行くことにした。
松本バスターミナルから高山行きの高速バスに乗り、平湯温泉まで約1時間半。
このバスが走る国道沿いには梓川が流れていて、途中に大きなダムもあり、なかなかの絶景が楽しめる。

梓川を上流へと遡っていった先には上高地がある。明日に予定している上高地ハイキングに思いを馳せ、ウキウキ気分で景色を眺めているうちに、長いトンネルが続くエリアに入り、ほどなく平湯バスターミナルに到着した。

チェックインまで30分ほど時間があったので、アルプス街道平湯のお土産売場でもなかアイスを買ってきて、ベンチでひと休みすることに。昔来た時に美味しくて気に入っていたもなかアイス、今も変わらず売っていてくれて嬉しい。

平湯館は、ここから歩いて3分くらいの便利な場所にある。
リニューアル前がどんな玄関だったか覚えていないけれど、明らかに綺麗になっている気がする。

玄関を入ってすぐ左手にある帳場でチェックインを済ませたら、右手にある下足処で鍵つきロッカーに靴をしまい、スリッパに履き替える。
下足処の隣にはアメニティコーナーがあり、作務衣もここで自分サイズのものをピックアップする。荷物も自分で運ぶし、基本的にセルフサービス。合理的でサッパリしていて、こういうのも良いなと思う。
部屋の鍵もカードキーで、近代的な設備になっていた。
今回予約した仙岳荘の部屋は帳場から離れた位置にあり、乗鞍荘という古い時代の趣を残す建物を経由して到着する。

乗鞍荘には共用の洗面所もあったりして、老舗らしい雰囲気を醸し出している。
飛騨のシンボル「さるぼぼ」人形も、あちこちに飾られている。

畳の上にマットレスを置いたベッドが設置された和室は、それほど広い印象ではないけれど、スッキリしていて過ごしやすい。布団を敷く手間がないのも嬉しい。
窓際には大きめのテーブルがあり、窓の外には庭の池が見えた(自分の手が映り込んで心霊写真風になってしまった...)。

水回りもこざっぱりしていて、必要なものがコンパクトにまとまっている。

お着き菓子がなかったことだけが、ちょっと淋しい。
お茶やコーヒーも部屋には用意されておらず、アメニティコーナーから自分で取ってくるスタイル。後で見に行ったら、アールグレイティーバッグ、インスタントコーヒー、パウダータイプのお茶などがあった。

既にもなかアイスを食べてひと休みした後なので、部屋でお茶を飲むのは後回しにして、早速温泉へ浸かりに行く。
大浴場へ行く途中、「乗鞍階段」を降りてみた。
使い込まれた木の風合いが素敵なこの階段は、急で滑りやすいためエレベーターの方がお薦めだと立て看板には書いてあるけれど、ここを通るのが近道なので用心しいしい利用する。他のお客さんも乗鞍階段を愛用しているようで、上りと下りですれ違うことも多く、館内の交通の要所みたいになっていた。

乗鞍階段を下りたところには、ちょっとした図書コーナーがある。登山関係の本が多い印象。

その先へ進むと大浴場。
午後は階段を上がった2階にある「木響の湯」が女湯となっている。

広々とした内湯に足を踏み入れると、やや薄暗い空間に木の香りが漂っていて心地良い。まずは身体を洗い、ぬるめの方の浴槽に浸かった。お湯はうっすら濁っていて、わずかに茶色っぽい。匂いも刺激も特にない、やさしい感触のお湯。
ざっと温まったところで外へ出て、露天へ移動する。
出てすぐのところにある檜風呂が、記憶にある合掌風呂とほぼ同じだった。
一部に壁が建てられて解放感は減った気がするけれど、素敵な木組みの屋根を見て「そうそう、こんなだった♪」と嬉しくなる。
ただ、お湯の色は茶褐色ではなく、内湯と同じうっすら濁ったお湯だった。
お風呂から出た後に脱衣所で説明書きを読んで、その訳が分かったような気がした。

源泉は4つあり、それがブレンドされて全ての浴槽にかけ流されている。
思うに、4つのうちのどれかが茶褐色なのではないかと。それが色々混ぜ合わされて、あの色になっているような気がする。
ブレンドされたお湯も気持ち良かったけれど、それぞれの浴槽で違った源泉を楽しめたらいいのにな~と、少し残念な気もした。
かけ流しだけど加温・加水・塩素消毒ありという設定もちょっと謎。でも、塩素臭が気になるわけでもなく、風情のある浴場で心地よい湯浴みができて、長旅の疲れが癒された。

お風呂に行ったついでに広い館内をウロウロしていたせいで、部屋に戻ってひと休みしたら割とすぐに夕食の時間になった。
平湯館は夕食・朝食ともにバイキング。地下のバイキング会場に入ると、人気の窓際席は全て埋まっていたため、中央にある大きいテーブルに席を取った。
まずは子芋の煮っころがし、サイコロステーキ、天ぷら、ポテトサラダ、山菜と油揚げの煮物からスタート。

最近はライブキッチンというのを充実させたゴージャスなバイキングが流行りのようだけれど、平湯館は昔ながらのオーソドックスなバイキングなので、全部が全部できたて熱々な訳ではない。それでも、温かい料理でほどよくお腹を満たせるのは嬉しい。

茶碗蒸しと桜風味の胡麻豆腐みたいのを追加して、最後にデザートを。
自分でチャッカマンで火をつけて鍋を楽しむ趣向もあったけれど、既に満腹になってしまった。。。

お風呂は夜12時までなので、11時頃に再び浸かりに行った。

* * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * *

翌朝の入浴は「杣人の湯」にて。こちらの方が露天風呂が広々しているけれど、お湯は昨日と同じで4種混合泉。
大型旅館だから、いつも必ず他のお客さんがいて、お風呂の写真は撮れなかった。

朝食は入場時間が7時~8時のところ、7時50分頃に出かけたら窓際席が空いていた♪

酢飯に具材を載せて自分で作る海鮮丼が楽しい。海鮮丼に合わせて、今朝は和定食風にした。
「漬物ステーキ」という、刻んだ白菜漬けを卵と一緒に焼いたおかずが、素朴ながら独特に美味しい。
デザートには五平餅もあり、奥飛騨気分を味わえて満足♪

いつもなら食後はひとしきり部屋でゴロゴロするところだけれど、今回は上高地ハイキングが待っているので、早速出発することに。
バスターミナルまですぐだから、9:30のバスに乗れる!
と言っても、平湯温泉から上高地に向かうバスは30分に1本出ているので、あまり時間を気にする必要はない。
平日だから空いてるかと思いきや、外国人観光客が大勢いる…。やってきたバスは既にほぼ満席で乗り切れず、臨時増発便が出る有様💧(このバスは平湯温泉が始発だと思っていたのだけど、この人たちはどこから乗ってきたんだろう??)
外国の方々に挟まれて運転手さんに切符を渡したら、Thank you!と言われてしまった(笑)
どんよりとした曇り空の下、30分ほどで上高地バスターミナルに到着。

かなりひんやりしていて、長袖カットソー+麻のカーディガン+ソフトシェルという着込み具合で丁度良かった。
バスターミナルから遊歩道に入る入口のところに、上高地の鳥たちの看板があった。
既に色々な囀りが聴こえていて、今日は何種類の野鳥に会えるかな~♪と期待が高まる。

まずはコマドリに会える確率が高そうな梓川左岸道を歩くことにした。
歩き始めると早速、小梨平キャンプ場近くでゴジュウカラを発見。頭を下にしたお得意のポーズで、木の幹を螺旋階段のようにグルグル回りながら下っている。いつ見ても忍者のような鳥だなぁと楽しく観察。
ちょうどニリンソウという花が見頃で、あちこちに咲いていた。

先へ進んでいくと、ピンカララララ…と、コマドリの元気な囀りが聴こえてきた!
本当にあちこちで鳴いているけれど、なかなか姿は見つからない。
でも、この爽やかな声を聴けただけで幸せ♪と思っていたら、ひときわ近いところから囀りが聴こえた。絶対その辺にいると確信して、笹薮の地面に近いところに双眼鏡を向け、スーッと横に見ていったら、オレンジ色の小鳥が視野に入った。
コマドリいたー✨
近距離から双眼鏡でジロジロ見られていても、あまり気にするふうもなく、つぶらな瞳でこちらを見ている。
可愛い💛と静かな喜びを噛みしめていると、すぐに鳥撮りの人が隣にやってきて、パパラッチのようにシャッターを切り始めた。
シャッター音が鳴り始めた瞬間、コマドリはビクッとした表情で身をよじらせ、飛んで行ってしまいそうに見えたけれど、どうやら気を取り直してくれたようで、再び嘴を天に向けて高らかに囀り始めた。
その後も足で頭をカリカリ掻いてみたり、サービス満点で愛らしい姿を見せてくれた。
あまりしつこく見ていても鳥に迷惑かもと思い、ほどほどのところで切り上げて先へ進むことに。

その先ではオオルリキビタキと思われる鳴き声が聴こえたけれど、木の高いところにいるらしく、姿を見つけることはできなかった。
そして、キビタキツクツクボウシの真似をしていると思われる鳴き声にも遭遇して、これが噂のやつか!と驚いた。
本当にツクツクボウシにしか聞こえないけど、こんな時期にセミツクツクボウシがいるはずもない(そもそもこんな標高の高いところに生息しているんだろうか?)。声の主は確認できなかったものの、これはキビタキに違いない!
そうこうするうちに明神橋に到着。

この辺りまでは引っきりなしに人がいる状況で、クマの心配はほとんどなかった。さらに徳沢の方まで行くと人気がなくなるのかもしれないけれど、ここで橋を渡り、橋のたもとにあるカフェ・ド・コイショさんでひと休みすることに。

ランプが灯された雰囲気の良いお店で、本日のケーキ(ガトーショコラ)とコーヒーを頂く。いかにも上質なチョコレートのお味&しっとり食感で、とても美味しかった💛

ひと息ついた後は梓川右岸道へ入り、河童橋方面へ。
右岸でもコマドリがあちこちで鳴いていて、1羽の姿が見えたけれど、こちらはすぐに逃げて行ってしまった。
しばらく歩くと、道から見下ろす位置にある木の幹に大きめの鳥がとまっているのが見えた。双眼鏡を向けると、カケスだった。枝から枝へと忙しく移動しながら、何かを食べている。見下ろすポジションでカケスを観察できる機会はあまりなかったので、よくよく見れて楽しかった。

さらに進んでいくと、何やらけたたましい声がする。何の鳥だ?と思って見回すと、鳥ではなく猿だった。
群れで移動中のようで、子猿もたくさんいる。(1枚だけそーっと撮らせてもらったけど、ピンボケになった)

猿たちは人間が大勢いる環境に慣れているようで、威嚇してくることもなく、荷物を狙う訳でもない。悠々と傍を通り過ぎていくので、こちらも静かにすれ違う。
上高地では猿に餌をやってしまうような観光客はいないようで、お互いに良い距離間が保てているように思えた。
行けども行けども猿とすれ違うエリアを抜けると、パラパラと小雨が降り始めた。とりあえず帽子を傘がわりにしてそのまま進む。
少し開けた池のような場所(岳沢湿原?)に出たので、木道の端まで行って水面を見渡してみると、遠くにマガモが2羽いるのが見えた。

せっかくだからマガモも見ておこうと双眼鏡を向けると、マガモより近くにオシドリの雄がいた!
あんな派手な色彩の鳥なのに、全然気づかなかった。たまたまマガモがいてくれたから運良く気づけたけれど、そうでなければスルーしてしまうところだった…。
オシドリは水面の水草か何かを食べるのに一生懸命で、ジロジロ見られているのも気にせずこちらに向かってくる。お陰でかなり近くからじっくり観察できた✨
オシドリを見たのも初めてだったので、本当に嬉しく大満足な鳥見ハイキングとなった。
上高地の野鳥たちは比較的警戒心が薄いような気がする。美しい景色を楽しみながら鳥見をするには最高のロケーションだと思った。

梓川左岸+右岸のコースは地図では2時間くらいだけれど、途中で立ち止まって鳥を見たり、コーヒータイムを楽しんだりしたため、結局4時間以上かけてハイキングを堪能した。深い満足感にひたりつつ、14:30のバスに乗り込んだ。

平湯館の部屋に戻った後は、アルプス街道平湯で買ったパンとアールグレイティーでひと休みしてから温泉へ。たくさん歩いた後にゆったり浸かる温泉は格別♪

体力を消耗した後であまりお腹が空かなかったけれど、せっかくなのでちょこっとだけ夕食を食べに行った。こういう使い方が出来るところが、バイキングはありがたい。
食後は少し眠ってから、また11時過ぎに夜の温泉へ。

* * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * *

最終日は快晴だった。
爽やかな山の朝の空気を吸い込みながら、広々とした露天風呂で最後の湯浴みを楽しむ。
この4種混合泉は一浴で肌がつるっとする感じではなかったけれど、繰り返し浸かっているうちに、いつのまにかスベスベになっていた。(いい意味で)パンチの弱いお湯なので、どんな体調の時でも安心して浸かれるなと思った。

昨日に引き続き、窓際席で朝食を頂く。

今日は洋食で統一しようと思ったのに、気づいたら和洋折衷になっていた。やっぱりお気に入りの漬物ステーキは外せない。
朝食後、精算を済ませてから部屋に戻った(早めの精算は前日の21時から可能)。あとは、渡された和柄の巾着袋にカードキーを入れて、帳場の前にある籠に返しておくだけでチェックアウトできる。チェックアウト時間に行列ができるのを回避する工夫が素晴らしい。

帰りのバスを12:55の便にしたので、チェックアウト後は平湯温泉マップを片手に周辺を散策してみたけれど、天気が良すぎて干上がってきてしまった。
冷たいものが飲みたい!と思って、ひらゆの森でひと休みすることに(ひらゆの森は飲食だけの利用もOK)。

氷の入ったオレンジジュースが美味しい~♪ 揚げたてサクサクの飛騨牛コロッケもウマい!
フロント横の「喫茶こもれび」は意外にも空いていて、バスの出発時刻までゆったり過ごせた。

新しくなった平湯館は、色々と合理化されてビジネスホテル的な気軽さがありながら、館内には風情があり、気分よく湯浴みができる、使い勝手の良い宿だった。
上高地ハイキングの拠点として最適な宿だと思うので、またお世話になりたい。

=Memo=
1泊2食つき 13,884 yen(春旅キャンペーン価格)
夕食@バイキング会場、朝食@バイキング会場
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉(pH6.6~7.0)
※泉質はホームページの記載に基づく。脱衣所の分析表では「単純温泉」だったような…

宝巌堂(栃尾又温泉)★早春編

前回の滞在から1年弱が経過して、また栃尾又を訪れる時期がやってきた。
この冬、豪雪地帯の栃尾又では例年より積雪が少なかったらしく、到着したら道路には全く雪がなかった。

バスを降りて宝巌堂に続く坂道を上っていくと、懐かしさがこみあげて「帰ってきた…」という気分になる。(この地で生まれ育ったわけでもないのに厚かましいけれど)
いつも通りの可愛い帳場の隣には、お雛様が飾られていた。
この辺りでは3月3日を過ぎても慌てて片付けなくて良い風習らしい。春らしい風情でいいなぁ💛

前回に引き続き、今回もお一人様専用の2-8の部屋に泊まる。すっかりお気に入り。
部屋に足を踏み入れると宝巌堂さん特有の匂いがして、すごく落ち着く。お香とかではなく部屋そのものが発する、この匂いがとても好き。
まだ朝晩は寒いので、炬燵が出ていた。嬉しい。
用意されていたお菓子は、今回もラパンさんのおからクッキーと新潟米のおかき。

まずは持参した薄手のタオルを洗面所のタオル掛けにセットする。
以前、このタオル掛けにはふかふかの今治タオルが掛かっていたのだけれど、コロナ禍が始まってからはペーパータオルに替わってしまった。
頻回に手を洗う私がペーパータオルを使うと、あっという間に紙ゴミだらけになってしまうので、手拭き用のタオルがあると断然快適。これを掛けると「今からここは自分の部屋♪」という気分になる。

手を洗ってサッパリしたら、窓際テーブルでお昼のおにぎりを食べてひと休み。
そして落ち着いたところでお風呂に行く準備に取り掛かる。
宝巌堂さんは部屋に金庫がなく、貴重品は専用の封筒に入れて帳場に預ける仕組み。

今回はお年玉券が使える時期だったので、頂いた年賀状も忘れずに持参した。
残念ながらお年玉くじには外れたけれど、それでも2023円引き(←2023年だから)になるのでありがたい。当たっていれば2倍の4046円引きになる!
来年こそ当たりたいな~と思うけれど、いつも惜しいところでなかなか当たらない。
スタンプカードもいっぱいになったのがあるけれど、これはまたいずれ使うとしよう。
あとは現金やらカードやら一式預けてしまえば、滞在中は安心。

温泉に続く階段には、まだ雪囲いが施されていた。
それが滞在中、毎日少しずつ板が外されていって、だんだん階段が明るくなってゆく様子が春の訪れを感じさせた。

初日は「おくの湯」で、長湯しすぎないよう気をつけつつ湯浴みを楽しんだ。
浴槽の中で春の日差しがキラキラして、とても綺麗。
湯上りにちょっと道をブラついていたら、側溝の中を何かの鳥が歩いていて、あれは何だ?と思ってサンダルのまま追跡したら、すかさず足指に靴擦れができた💧
双眼鏡を持っていなかったので、結局何の鳥かは分からずじまい。

その後いつものように本箱で雑誌などピックアップして部屋に戻り、紅茶を飲みつつゆっくり過ごした。

6時になると、お楽しみの夕食が部屋に届いた。
今回は、この時期しか味わえない緑川酒造の「霞しぼり」という生酒をお願いしていて、それも楽しみだった。うっすら濁ったお酒が桜模様のピンク色のグラスに注がれていて、春気分が盛り上がる~♪
今宵の献立は、ブリ塩糀漬、越後もち豚ヒレと八色しいたけフライ、新じゃが甘辛煮、もずくサラダ、春菊くるみあえ、うるいナムル、コシヒカリ、味噌汁、つけもの。

濁りのあるお酒は甘口なイメージだったけれど、「霞しぼり」は予想外にキリッとした味わいだった。ひと口飲むと、先に食べたおかずの味をリセットしてくれつつ、香りがフワッと鼻を抜ける感じで、とても良い。
よく漬かったブリは身がキュッと締まってやや濃いめの味で、ご飯がすすむ。ヒレカツは豪勢な厚みのお肉で食べごたえあり。大好きな八色しいたけのカツはいつもながら絶品♪
そして、ピンポン玉みたいな可愛いジャガイモが美味しすぎる!ねっとりした食感で、甘辛だれとベストマッチ💛
うるいのほんのりした苦みも春らしく、手の込んだくるみあえの春菊も美味。

このたび宝巌堂さんは「新潟ガストロノミーアワード」の温泉文化賞を受賞された。
どんな賞なのかな?と思い、アワードの公式サイトを覗いてみると、受賞した旅館・ホテルは全部で30あり、よく雑誌でみかける高級旅館や有名旅館がズラリと並んでいる。その中でも特に選ばれた6つの宿が大賞や特別賞を受賞しており、特別賞の中の1つが温泉文化賞。これはすごい!と目をみはった。
賞を取っても取らなくても宝巌堂さんのご飯が美味しいことに変わりはないけれど、こうして目利きの人たちからも高い評価を受けるということは、やっぱり喜ばしい。
ふりかえれば私も宝巌堂さんに泊まって初めて、魚沼は野菜も美味しい土地なのだということを知った。八色しいたけも、夏のスイカや枝豆も、味が濃くて甘みが強く、普段自分が食べている野菜とは別物に思える。
「なますうり」のように、ここでしか食べたことのない野菜も出てくるので、いつも本当に楽しみ。
そうやって、魚沼の旬の美味しいものや珍しいものを振る舞って頂けるのは、確かに文化だよな~と納得する。

満腹になったら眠くなってしまい、夜はお風呂に行かなかったけれど、それでも温泉効果がもう現れていたようで、布団に入るとポカポカすぎて暑いくらいだった。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

外が明るくなり始め、階下で朝食の支度が始まっている気配を感じつつ、惰眠を貪る。この朝のひとときが堪らなく幸せ。
今日もいい天気になりそう!
7:30頃にようやく起き出してテレビをつけ、「さわやか自然百景」を見終わると、朝食が届いた。

朝食はおかずが少なめで、炊きたてのコシヒカリが主役。お櫃のご飯を完食できる余裕があるのが嬉しい。具だくさんのお味噌汁には野菜の甘みが溶け出していて、しみじみ美味しい。
今日は卵焼きの日♪ しっとりツヤツヤの姿が美しいのでアップで撮ってみた。
みかんのように見える果物は簡単に皮がむけて食べやすく、味はオレンジっぽかった。温州みかんではなさそうだけど、何の種類だろう?(後で聞こうと思って忘れた)
大満足で完食した後は、お盆を廊下の台に載せておく。

食後は緑茶を淹れて、炬燵でのんびり味わう。
そして、お腹がこなれた頃を見計らって朝の入浴へ。今日は「うえの湯」の日。
自分を含めて4人くらいしか入っていなかったので、空いてるなと思ったら、この週末は日曜が自在館さんの休館日だった。なるほど。
ぬる湯が割と温かいと思ったけれど、やっぱりずっと浸かっていると寒く感じるので、沸かし湯とぬる湯を行ったり来たりしながら1時間ほど入浴した。
さて、部屋へ戻って身支度をしたら、春を探しにお散歩へ♪

日当たりの良い道端には、もうカタクリの花が咲いていた。ミズバショウも咲いている。
一番よく目についたのはショウジョウバカマという紫色のポンポンみたいな花だった。本箱にあった魚沼の野の花の写真集を見ていたら、雪解けの季節、真っ先に咲いて春を告げる花らしい。
苔の間からも小さな紫色の花が顔を出していて可愛い(名前は分からず…)。

昨日、側溝で見かけた鳥がまたいないかな~と覗きながら歩いたけれど、今日はいなくて残念。
側溝にも澄んだ雪解け水が流れ込んで、小川みたいになっている。

見かける野鳥は、ほとんどがホオジロだった。
ゆったりしたテンポでピ~ツツ、ピ~ツツ♪と囀る声が聞こえていたので、ヤマガラかな?と思って見回していたら、やっぱりヤマガラがいた。
まだツバメたちは到着していないし、ウグイスも鳴いていないので、鳥の姿は少なめ。
日差しはそれほど強くないけれど、眩しいので帽子を持ってくれば良かったと思った。

杉木立の向こうに見える残雪と渓流が清々しい✨
雪解け水が流れ込む川の水は、いつもより青みがかって見える。
まだ早いとは知っていたけれどカタクリ群生地も見に行ってみたら、そっち方面の道路の入口には雪の壁が立ちはだかっていた。。。

これを見て、この先にある駒の湯温泉が冬季休業である訳が分かった。
散歩はここまでにして宿に戻り、ちょっと暑くなったのでジェラートを買って、部屋でおやつタイムに。
その後は読書をしながらまったり過ごし、夕方に再び「うえの湯」で1時間ほど入浴。

そろそろ夕食という時間になると、軽い頭痛を感じた。
そういえば昨年も2日目の夕方に頭痛が出たことを思い出す。これはひょっとして湯あたりか?
栃尾又のお湯は体温程度のぬるさで何の刺激もないけれど、実は底知れぬパワーを秘めている気がするので、その時の体調次第では湯あたりするのかもしれない。
そんな状態なので、この日はお酒抜きで夕食を頂いた。
今宵の献立は、刺身の味噌あえ、ハンバーグ、八色菜おひたし、人参とマンゴーのレモンマリネ、ごまなます、うるい梅酢、コシヒカリ、味噌汁、つけもの。

宝巌堂さんでハンバーグが出たのは初めて。大好きなので嬉しい♪
八色菜という野菜も初登場。歯ざわりはツルムラサキっぽいけど、特に匂いはなく、さっぱりしていて箸休めに良い。
最近の定番らしき刺身の味噌あえは、ご飯のお供にぴったり。
大根と油揚げのごまなますは味付けが絶妙で、名残惜しい美味しさだった。女将さんのブログで作り方が紹介されていたけれど、自分で作ったら絶対こうはならない。。。
うるいも爽やかな梅酢がよく合っていて、昨日とは趣の違う味わいが楽しめた。
美味しいものばかりを腹9分目で食べ終える幸せ💛 宝巌堂さんの湯治プランは本当に完璧だと思う。
いつの間にか頭痛も消えていた。満ち足りた気分で今宵も早寝!

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

最終日の朝は6:30に起きて、朝食前に「したの湯」へ。

階段を下りて行くと渓流の水音をバックにミソサザイの元気な囀りが聴こえてきた。
なんて爽やかな朝✨

脱衣所の棚を見ると、先客は1名のみ。その方もほぼ入れ違いで出てゆかれ、朝の「したの湯」を貸し切り状態で堪能してしまった。
なかなかない機会なので、湯口の真ん前に座ってフレッシュな源泉を楽しんだ。
朝からゆったり1時間ほど入浴して部屋に戻り、最後の朝食を頂く。
今日は温泉卵の日。温泉卵にかかっているのは普通の醤油で結構味が濃いため、卵かけご飯にしたら、あっという間にご飯がなくなってしまった!
そんな訳で海苔にたどり着く前にお櫃のご飯を完食(笑)
赤魚(?)の焼き魚も、ほうれん草の胡麻和えも、車麩の煮物も、みんな美味しかった~💛

今回、4月のダイヤ改正栃尾又発10:25のバスがなくなってしまったため、10:30にチェックアウトした後は12:55まで時間をつぶさなければならなくなった。
宝巌堂さんにはいわゆるロビーのような場所はないので、食事処を開放して下さり、荷物を置いておいたり、そこで過ごしても良いことになった。本箱も利用OKだそう。
なので、とりあえず食事処に荷物を置いて今日も散歩に出かけることにした。
いつも最終日は30分くらいしか散歩する暇がないので、時間を気にせず散歩ができるのはいいかも。
幸い天気も良かったので、昨日と同じ道をのんびり立ち止まりながら歩いてきたら、すぐ12時くらいになってしまった。喉が渇いたので今日もジェラートを買って、食事処でひと休み。
湯治プランだと朝食も夕食も部屋なので、食事処で過ごすのが新鮮に感じられる。

その後は女将さんと雑談したりしているうちに、ほどなくバスの時間になった。
チェックアウト後2時間強ってちょっと長いな…と思っていたけれど、意外とあっという間だった。
いつもよりたっぷり栃尾又に滞在できて春を満喫したので、最終日ゆったりコースもなかなかいいじゃないか♪と思った。

=Memo=
1泊2食つき 17,050 yen(湯治プラン)
夕食@部屋、朝食@部屋
Check in 12:50/out 10:30
温泉:ラジウム泉(pH8.4~8.6)
バス代(小出駅栃尾又温泉)460 yen(SUICA等使用不可)