宝巌堂(栃尾又温泉)★早春編

前回の滞在から1年弱が経過して、また栃尾又を訪れる時期がやってきた。
この冬、豪雪地帯の栃尾又では例年より積雪が少なかったらしく、到着したら道路には全く雪がなかった。

バスを降りて宝巌堂に続く坂道を上っていくと、懐かしさがこみあげて「帰ってきた…」という気分になる。(この地で生まれ育ったわけでもないのに厚かましいけれど)
いつも通りの可愛い帳場の隣には、お雛様が飾られていた。
この辺りでは3月3日を過ぎても慌てて片付けなくて良い風習らしい。春らしい風情でいいなぁ💛

前回に引き続き、今回もお一人様専用の2-8の部屋に泊まる。すっかりお気に入り。
部屋に足を踏み入れると宝巌堂さん特有の匂いがして、すごく落ち着く。お香とかではなく部屋そのものが発する、この匂いがとても好き。
まだ朝晩は寒いので、炬燵が出ていた。嬉しい。
用意されていたお菓子は、今回もラパンさんのおからクッキーと新潟米のおかき。

まずは持参した薄手のタオルを洗面所のタオル掛けにセットする。
以前、このタオル掛けにはふかふかの今治タオルが掛かっていたのだけれど、コロナ禍が始まってからはペーパータオルに替わってしまった。
頻回に手を洗う私がペーパータオルを使うと、あっという間に紙ゴミだらけになってしまうので、手拭き用のタオルがあると断然快適。これを掛けると「今からここは自分の部屋♪」という気分になる。

手を洗ってサッパリしたら、窓際テーブルでお昼のおにぎりを食べてひと休み。
そして落ち着いたところでお風呂に行く準備に取り掛かる。
宝巌堂さんは部屋に金庫がなく、貴重品は専用の封筒に入れて帳場に預ける仕組み。

今回はお年玉券が使える時期だったので、頂いた年賀状も忘れずに持参した。
残念ながらお年玉くじには外れたけれど、それでも2023円引き(←2023年だから)になるのでありがたい。当たっていれば2倍の4046円引きになる!
来年こそ当たりたいな~と思うけれど、いつも惜しいところでなかなか当たらない。
スタンプカードもいっぱいになったのがあるけれど、これはまたいずれ使うとしよう。
あとは現金やらカードやら一式預けてしまえば、滞在中は安心。

温泉に続く階段には、まだ雪囲いが施されていた。
それが滞在中、毎日少しずつ板が外されていって、だんだん階段が明るくなってゆく様子が春の訪れを感じさせた。

初日は「おくの湯」で、長湯しすぎないよう気をつけつつ湯浴みを楽しんだ。
浴槽の中で春の日差しがキラキラして、とても綺麗。
湯上りにちょっと道をブラついていたら、側溝の中を何かの鳥が歩いていて、あれは何だ?と思ってサンダルのまま追跡したら、すかさず足指に靴擦れができた💧
双眼鏡を持っていなかったので、結局何の鳥かは分からずじまい。

その後いつものように本箱で雑誌などピックアップして部屋に戻り、紅茶を飲みつつゆっくり過ごした。

6時になると、お楽しみの夕食が部屋に届いた。
今回は、この時期しか味わえない緑川酒造の「霞しぼり」という生酒をお願いしていて、それも楽しみだった。うっすら濁ったお酒が桜模様のピンク色のグラスに注がれていて、春気分が盛り上がる~♪
今宵の献立は、ブリ塩糀漬、越後もち豚ヒレと八色しいたけフライ、新じゃが甘辛煮、もずくサラダ、春菊くるみあえ、うるいナムル、コシヒカリ、味噌汁、つけもの。

濁りのあるお酒は甘口なイメージだったけれど、「霞しぼり」は予想外にキリッとした味わいだった。ひと口飲むと、先に食べたおかずの味をリセットしてくれつつ、香りがフワッと鼻を抜ける感じで、とても良い。
よく漬かったブリは身がキュッと締まってやや濃いめの味で、ご飯がすすむ。ヒレカツは豪勢な厚みのお肉で食べごたえあり。大好きな八色しいたけのカツはいつもながら絶品♪
そして、ピンポン玉みたいな可愛いジャガイモが美味しすぎる!ねっとりした食感で、甘辛だれとベストマッチ💛
うるいのほんのりした苦みも春らしく、手の込んだくるみあえの春菊も美味。

このたび宝巌堂さんは「新潟ガストロノミーアワード」の温泉文化賞を受賞された。
どんな賞なのかな?と思い、アワードの公式サイトを覗いてみると、受賞した旅館・ホテルは全部で30あり、よく雑誌でみかける高級旅館や有名旅館がズラリと並んでいる。その中でも特に選ばれた6つの宿が大賞や特別賞を受賞しており、特別賞の中の1つが温泉文化賞。これはすごい!と目をみはった。
賞を取っても取らなくても宝巌堂さんのご飯が美味しいことに変わりはないけれど、こうして目利きの人たちからも高い評価を受けるということは、やっぱり喜ばしい。
ふりかえれば私も宝巌堂さんに泊まって初めて、魚沼は野菜も美味しい土地なのだということを知った。八色しいたけも、夏のスイカや枝豆も、味が濃くて甘みが強く、普段自分が食べている野菜とは別物に思える。
「なますうり」のように、ここでしか食べたことのない野菜も出てくるので、いつも本当に楽しみ。
そうやって、魚沼の旬の美味しいものや珍しいものを振る舞って頂けるのは、確かに文化だよな~と納得する。

満腹になったら眠くなってしまい、夜はお風呂に行かなかったけれど、それでも温泉効果がもう現れていたようで、布団に入るとポカポカすぎて暑いくらいだった。

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

外が明るくなり始め、階下で朝食の支度が始まっている気配を感じつつ、惰眠を貪る。この朝のひとときが堪らなく幸せ。
今日もいい天気になりそう!
7:30頃にようやく起き出してテレビをつけ、「さわやか自然百景」を見終わると、朝食が届いた。

朝食はおかずが少なめで、炊きたてのコシヒカリが主役。お櫃のご飯を完食できる余裕があるのが嬉しい。具だくさんのお味噌汁には野菜の甘みが溶け出していて、しみじみ美味しい。
今日は卵焼きの日♪ しっとりツヤツヤの姿が美しいのでアップで撮ってみた。
みかんのように見える果物は簡単に皮がむけて食べやすく、味はオレンジっぽかった。温州みかんではなさそうだけど、何の種類だろう?(後で聞こうと思って忘れた)
大満足で完食した後は、お盆を廊下の台に載せておく。

食後は緑茶を淹れて、炬燵でのんびり味わう。
そして、お腹がこなれた頃を見計らって朝の入浴へ。今日は「うえの湯」の日。
自分を含めて4人くらいしか入っていなかったので、空いてるなと思ったら、この週末は日曜が自在館さんの休館日だった。なるほど。
ぬる湯が割と温かいと思ったけれど、やっぱりずっと浸かっていると寒く感じるので、沸かし湯とぬる湯を行ったり来たりしながら1時間ほど入浴した。
さて、部屋へ戻って身支度をしたら、春を探しにお散歩へ♪

日当たりの良い道端には、もうカタクリの花が咲いていた。ミズバショウも咲いている。
一番よく目についたのはショウジョウバカマという紫色のポンポンみたいな花だった。本箱にあった魚沼の野の花の写真集を見ていたら、雪解けの季節、真っ先に咲いて春を告げる花らしい。
苔の間からも小さな紫色の花が顔を出していて可愛い(名前は分からず…)。

昨日、側溝で見かけた鳥がまたいないかな~と覗きながら歩いたけれど、今日はいなくて残念。
側溝にも澄んだ雪解け水が流れ込んで、小川みたいになっている。

見かける野鳥は、ほとんどがホオジロだった。
ゆったりしたテンポでピ~ツツ、ピ~ツツ♪と囀る声が聞こえていたので、ヤマガラかな?と思って見回していたら、やっぱりヤマガラがいた。
まだツバメたちは到着していないし、ウグイスも鳴いていないので、鳥の姿は少なめ。
日差しはそれほど強くないけれど、眩しいので帽子を持ってくれば良かったと思った。

杉木立の向こうに見える残雪と渓流が清々しい✨
雪解け水が流れ込む川の水は、いつもより青みがかって見える。
まだ早いとは知っていたけれどカタクリ群生地も見に行ってみたら、そっち方面の道路の入口には雪の壁が立ちはだかっていた。。。

これを見て、この先にある駒の湯温泉が冬季休業である訳が分かった。
散歩はここまでにして宿に戻り、ちょっと暑くなったのでジェラートを買って、部屋でおやつタイムに。
その後は読書をしながらまったり過ごし、夕方に再び「うえの湯」で1時間ほど入浴。

そろそろ夕食という時間になると、軽い頭痛を感じた。
そういえば昨年も2日目の夕方に頭痛が出たことを思い出す。これはひょっとして湯あたりか?
栃尾又のお湯は体温程度のぬるさで何の刺激もないけれど、実は底知れぬパワーを秘めている気がするので、その時の体調次第では湯あたりするのかもしれない。
そんな状態なので、この日はお酒抜きで夕食を頂いた。
今宵の献立は、刺身の味噌あえ、ハンバーグ、八色菜おひたし、人参とマンゴーのレモンマリネ、ごまなます、うるい梅酢、コシヒカリ、味噌汁、つけもの。

宝巌堂さんでハンバーグが出たのは初めて。大好きなので嬉しい♪
八色菜という野菜も初登場。歯ざわりはツルムラサキっぽいけど、特に匂いはなく、さっぱりしていて箸休めに良い。
最近の定番らしき刺身の味噌あえは、ご飯のお供にぴったり。
大根と油揚げのごまなますは味付けが絶妙で、名残惜しい美味しさだった。女将さんのブログで作り方が紹介されていたけれど、自分で作ったら絶対こうはならない。。。
うるいも爽やかな梅酢がよく合っていて、昨日とは趣の違う味わいが楽しめた。
美味しいものばかりを腹9分目で食べ終える幸せ💛 宝巌堂さんの湯治プランは本当に完璧だと思う。
いつの間にか頭痛も消えていた。満ち足りた気分で今宵も早寝!

* * * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * * * 

最終日の朝は6:30に起きて、朝食前に「したの湯」へ。

階段を下りて行くと渓流の水音をバックにミソサザイの元気な囀りが聴こえてきた。
なんて爽やかな朝✨

脱衣所の棚を見ると、先客は1名のみ。その方もほぼ入れ違いで出てゆかれ、朝の「したの湯」を貸し切り状態で堪能してしまった。
なかなかない機会なので、湯口の真ん前に座ってフレッシュな源泉を楽しんだ。
朝からゆったり1時間ほど入浴して部屋に戻り、最後の朝食を頂く。
今日は温泉卵の日。温泉卵にかかっているのは普通の醤油で結構味が濃いため、卵かけご飯にしたら、あっという間にご飯がなくなってしまった!
そんな訳で海苔にたどり着く前にお櫃のご飯を完食(笑)
赤魚(?)の焼き魚も、ほうれん草の胡麻和えも、車麩の煮物も、みんな美味しかった~💛

今回、4月のダイヤ改正栃尾又発10:25のバスがなくなってしまったため、10:30にチェックアウトした後は12:55まで時間をつぶさなければならなくなった。
宝巌堂さんにはいわゆるロビーのような場所はないので、食事処を開放して下さり、荷物を置いておいたり、そこで過ごしても良いことになった。本箱も利用OKだそう。
なので、とりあえず食事処に荷物を置いて今日も散歩に出かけることにした。
いつも最終日は30分くらいしか散歩する暇がないので、時間を気にせず散歩ができるのはいいかも。
幸い天気も良かったので、昨日と同じ道をのんびり立ち止まりながら歩いてきたら、すぐ12時くらいになってしまった。喉が渇いたので今日もジェラートを買って、食事処でひと休み。
湯治プランだと朝食も夕食も部屋なので、食事処で過ごすのが新鮮に感じられる。

その後は女将さんと雑談したりしているうちに、ほどなくバスの時間になった。
チェックアウト後2時間強ってちょっと長いな…と思っていたけれど、意外とあっという間だった。
いつもよりたっぷり栃尾又に滞在できて春を満喫したので、最終日ゆったりコースもなかなかいいじゃないか♪と思った。

=Memo=
1泊2食つき 17,050 yen(湯治プラン)
夕食@部屋、朝食@部屋
Check in 12:50/out 10:30
温泉:ラジウム泉(pH8.4~8.6)
バス代(小出駅栃尾又温泉)460 yen(SUICA等使用不可)