湯宿あかまつ(月岡温泉)

エメラルドグリーンの温泉に黒い油かすがプカプカ浮いている、あの独特なお湯にまた浸かりたくなって、この冬は月岡温泉へ。
この週末はまだ12月だというのに天気予報は早くも「大雪」。
事実、新幹線がトンネルを抜けて越後湯沢に出た時点では粉砂糖をふりかけた程度の雪だったのが、さらにトンネルを抜けて浦佐まで来ると、もう一面の雪景色!吹雪いているのか視界も悪い。そこから先はずっと白一色の世界が続き、新潟駅に到着した。
白新線が止まっていなくて良かったけれど、多少ダイヤが乱れていたようで、乗り換えに少し戸惑った。が、遅れもせず無事に豊栄駅に到着し、月岡温泉行きのシャトルバスに乗り込んだ。
シャトルバスは満員電車のように混んでいて、ちょっとビックリ。

今回お世話になるのは、2020年にオープンしたばかりの湯宿あかまつさん。

にいがた経済新聞のオンライン記事によると、この場所には元々さかえ館という温泉旅館があったのが廃業してしまい、その施設をリノベーションして湯宿あかまつがオープンしたらしい。ひとり客を歓迎してくれる素泊まりの小さな宿で、静かに温泉を楽しむにはなかなか良さそうな雰囲気。
入口のドアを開けて中に入ると、すぐにご主人が迎えに出て来られた。速やかに気づいてもらえるのって、地味に嬉しい。
前払い方式で先に支払いを済ませた後、鍵をもらって部屋へ向かう。2階建ての館内はシンプルな造りなので、特に詳しい説明などなくても迷うことはない。

階段を上がると、大きく部屋番号が書かれたドアが並んでいる。廊下には自由に使える電子レンジが2台置かれていた。

シモンズベッドが導入されているシングルの洋室もあるけれど、裸足でくつろげる和室が好きなので、今回は和室を選んだ。広々&こざっぱりしたお部屋で、窓も2ヶ所あり、開放的。パワフルな石油ヒーターとエアコンのダブル稼働で室内は既に暖かく、ここまで雪で濡れて寒かったのでホッとした。

部屋の奥には藤の椅子が2つと丸テーブルがあり、洗面台とトイレも備わっている。リニューアル直後なので、どちらもピカピカ✨
今回は寒かったので障子を閉めてしまい、こちらのエリアはほとんど使わなかったけれど、暖かい季節なら椅子&テーブルエリアも居心地が良さそう。
トイレに入ってみて、トイレットペーパーのクオリティの高さに驚き、思わず写真を撮ってしまった。


すてきなエンボス加工が施されており、ふっくらふかふか。
その他、小さい冷蔵庫、金庫、その都度沸かす湯沸しポットなど、必要なものは一通り揃っている(なぜか将棋セットもある)。
持参したパンとお茶で一服してから、早速お風呂へ♪

お風呂は男女別の内湯が1ヶ所のみ。入口に飾られている小さいクリスマスツリーが可愛い。
先客は立ち寄り入浴のお客さんが1人いただけで、ほぼ入れ違いで出てゆかれた。

このエメラルドグリーンの温泉は、含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉。バリバリの硫黄泉という感じではなく、pH値も7.6~8.0のアルカリ寄りなので、肌あたりはまろやか。加水なし、加温ありで、玄関に出ていた掲示によると今日の温度は42℃くらい。「浴槽清掃時に次亜塩素酸ソーダを使用しています」「入浴剤等の薬剤は一切使用しておりません」という分析表の説明からすると、浴槽内に塩素を投入しているわけではなさそう(塩素臭は全くなし)。熱くもなくぬるくもない丁度良い温度と、ほんのりとした硫黄の匂いで、浸かっていると骨抜きになりそうなリラックス感💛

やさしい感触のお湯だけれど、石の浴槽の表面にこびりついている薄黄色の硫黄や、金属の手すりの腐食っぷりを見ると、相当成分が濃い温泉なのだな~と思う。
黒いかすは浴槽の底に沈んでいて、お湯の中にはグレーの湯の花が浮かんでいた。そして、お湯の表面には所々油膜が張っている。この油分のせいか、温泉に浸かった肌はツルツルしつつヌルッとする。月岡温泉のお湯は本当に個性的。
分析表には「月岡源泉固有事情の中間浮遊物除去の為 濾過設備を稼働しております」とも書かれていたけれど、そうしないとお湯の中が黒いかすと湯の花だらけになってしまうのだろうと思われる。
脱衣場には、この浮遊物がゴミではなく良いものであることを啓蒙する張り紙が掲示されていた。

温泉で暖まった後は、この雪と寒さで外に出る気にもならないので、休憩室から本を持ち出して部屋でのんびり読書して過ごすことにした。

休憩室もピカピカ✨
本棚には温泉関係の本が色々あり、あとは小説や漫画が置いてあった。
私の大好きなホラー小説「屍鬼」が全巻揃っていて、おぉ!と思ったけれど、2泊では読み終わらないし、今日は温泉本を見てみることに。
そうして部屋でくつろいでいるうちにお腹が空いてきたので、新潟駅で調達してきた鮭はらこ弁当とスパークリング日本酒&おつまみチーズで早めの夕食タイムにする。買ってきておいて良かったー。

外ではしんしんと雪が降り続いており、窓の外には雪に埋もれた足湯の建物が見える。
せっかくだから雪景色を眺めていたい気もするけれど、暖房効率を考えて、滞在中はほぼ障子を締め切って過ごした。

夜は11時に浴室が施錠されるので、10時過ぎに就寝前の入浴へ。ちょうど先客の女性が出て行かれるところで、また1人でゆっくり浸かることができた。

* * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * *

目覚めると引き続き雪が降っている。
除雪車がフル稼働している音が聞こえ、温泉街の方々が除雪に精を出している気配が伝わってくる。大変そう。。。お疲れさまです!

本当は今回、近くにある福島潟という鳥見スポットに行ってみたかったのだけれど、とても歩き回れる状況ではないので、鳥見は諦めてとことん自堕落に過ごすことに決めた。
なので、朝もノロノロと起き出して、8:30から朝食を頂きに食堂へ。
あかまつさんは素泊まりの宿なのだけれど、希望者にはサービスの朝食を出してもらえるので、もちろん希望した。

食堂に入ると、母娘と思しきお客さんが1組いらしたのみで、とても静か。
サービスの朝食はパンもソーセージも温かく、シンプルで少量だけれど美味しかった。個人的には十分満足な量。
これを「1泊朝食つき」ではなく「サービス朝食」と表現しているところに奥ゆかしさを感じる。
部屋に戻ってひと休みした後、清掃直後の10時過ぎに朝の入浴へ行くと、やっぱり独泉だった。
何の予定もないので、とろけるようなお湯に時間を忘れて浸かっていられる。硫黄の匂いに包まれ、お湯が注がれるトポトポいう音に耳を傾けながら、なんて贅沢な時間だろう。。。と幸せを噛みしめる。

月岡の温泉街には色々と美味しいもののお店があるようなので、せっかくだから買いに行きたいと思い、雪だけど買い物に出かけることにした。
和菓子屋さん→チョコレート屋さん→お饅頭屋さんと回って甘いものを買いこんでから、宿の向かいにある月岡BREWERYでランチタイムに。さっき足首まで水溜まりに踏み込んでしまい、靴の中がビチョビチョだけど、まぁいいや。

店に近づくと、溌剌とした女性店長さんがウェルカム感全開で迎え入れてくださった。感じのいいお店♪
当初はハンバーガーが美味しそう!と思ってチェックしていたのだけれど、メニューを見たら他にもそそられる料理が色々あるので、結局ハンバーグランチに寝返った。

月岡温泉のお湯の色にちなんだエメラルドエールというビールも一緒に💛
仄かにマスカットの香りがするフルーティーなビールで、気分が上がる~。
朝ごはんが軽めだと、やっぱりお昼はガッツリ豪勢に食べたくなる。付け合せの野菜もたっぷりでバランス良く、お腹いっぱい。
支払いの際、ちょっと気になる情報を教えてもらった。どうやら白新線が止まっているらしい。そういえば、さっき雑談したお店の方も、新潟から月岡まで車で来たら2時間かかったとか…。思った以上に雪が良からぬ状況を引き起こしている模様で、明日が少し心配になる。

宿の部屋に戻ってテレビをつけてみると、確かに鉄道も道路も交通が乱れており、新潟県内ではあちこちで停電も起こっている💧
明日の朝の状況次第では、帰れない場合の対策も考えなければ…と思いつつ、とりあえず午後の入浴へ。

お風呂の後は、買いこんできた上生菓子とお饅頭でおやつを楽しむ。
部屋に備え付けてある湯呑は背の高い陶器のカップで、お茶はもちろんのこと、持参した紅茶やコーヒーを飲むのにも使い勝手が良い。こういうちょっとした所でセンスがいいお宿だなーと思う。

夜になっても雪はしんしんと降り続く。。。
今日はランチをしっかり食べたし、昼寝したり読書したりしているだけなので大してお腹は空かず、夕食は小腹用に持ってきたマフィンなどを食べて済ませてしまった。

* * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * *

最終日は先にお風呂に入ってから朝食へ。
サービス朝食の内容は昨日と同じだけれど、キャベツサラダにかけるドレッシングが5種類くらいあるので、ちょっと変化がつけられる。
ご飯を食べつつテレビのニュースを見ていると、まだ白新線は動いていない。
宿の方の見立てでは「今日中には動くと思います」ということなので、とりあえず昼頃に駅に着くよう11時のシャトルバスに乗ることにした。
10時にチェックアウトした後は休憩室に滞在させて頂き、引き続きテレビのニュースを見つつ、交通情報のテロップに目を光らせる。それにしてもNHKのテロップは酷い。「JR在来線は一部運休」って。。。大雑把すぎて何の役にも立ちゃしない。

11時をかなり回ってやってきたシャトルバスに乗って駅に向かう途中、白い雪野原の上を白鳥たちが飛んでいく姿がバスの窓から見えた。肉眼で顔まで見える距離だった。今回は鳥見ができなかったので、少しでも鳥に会えて嬉しかった。
ガチガチに凍った道を走り続け、豊栄駅に到着すると12時頃。
窓口の駅員さんに「ホームページでは昼頃に再開する見込みのようでしたけど…」と伺うと、今もまだ何時に再開とは言えない状況とのこと。
改札が解放されて中の待合室が使えるようになっていたので、そこで待つことにした。いちおう暖房らしき設備が天井についているけれど、結構寒い。
そして約1時間後、15時再開見込みのアナウンスがあった。あと2時間か。。。
ホッカイロを持っていたことを思い出して膝の上に載せてみたり、NEWDAYSでおにぎりを買って温めてもらって食べたり、温かい飲み物を買って飲んだり、と頑張ってみるけれど、時間が経つにつれて身体が冷えてゆく。
そろそろ15時という頃、再開見込みが16時にずれ込むアナウンスがあった。雪質のせいで、除雪に難航しているらしい。除雪して下さっている方々も本当に寒くて大変だろうなぁ…自分は屋内にいられるのだから楽じゃないか!と考えるものの、やっぱり寒いものは寒い💧
そして16時の見込みはさらに17時にずれ込み、もう今日はダメなんじゃないか?と絶望的な気分になってきた。温泉街にトンボ返りするなら、最終のシャトルバスは18時。17時でも動かなかったら、そこで決断しなければ。
外はすっかり暗くなり(元々どんより曇って暗い日だったけれど)、気力も体力も限界な感じ。身体が冷え切って震えが止まらなくなっている。

そして、待ち始めてからほぼ5時間が経過した17時少し前、ついに「お待たせ致しました」のアナウンスが。
おぉぉ!本当に動くのか!?と、まるで奇跡でも起こったような気分。待合室にいた人々が怒涛の勢いでホームに降りて行く。気づけば私は最後の1人(笑)
今さら急ぐ必要もないので、ゆっくりホームに下りて奇跡の電車に乗り込んだ。
しばらくして発車した電車は、スピードを落として慎重に走っているようだったけれど、それほど時間がかかることもなく新潟駅に無事到着した。ここまで来ればもう大丈夫、上越新幹線は平常運行している。
暖かい新幹線の座席に収まって人心地がついたものの、芯まで冷え切った身体はなかなか元に戻らない。
自宅の最寄り駅に辿り着いてから、駅構内の蕎麦屋さんでたぬき蕎麦を食べて身体を内側から温めると、ようやく生き返った気分になった。500円でお釣りがくる、このたぬき蕎麦の美味しかったことと言ったら…!
家に帰れるのがこんなに嬉しい温泉旅は初めてだったけれど、それもいずれは思い返して笑える思い出になるはず。
でも、雪は魔物だと今回思い知った。冬の新潟はリスキーだという認識はあったのだけれど、まさか12月にここまでなるとは完全に想定外だった。今後、冬の温泉旅の行き先は慎重に検討しなければ。

=Memo=
素泊まり(朝食サービス付き) 8,105 yen
朝食@食堂
Check in 15:00/out 10:00
温泉:含硫黄-ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉(pH7.6~8.0)

<忘備>
福島潟へオオヒシクイに会いに行くベストシーズンは11月下旬と思われる。
ビュー福島潟は月曜が定休日なので、それも考慮して旅程を組むべし。せっかくなら館内の展示も見たいし、中央カメラからも鳥見をしたい。