平湯館(平湯温泉)

過去に1度泊まってなかなか良かった平湯館がいつの間にか共立メンテナンスの傘下に入り、リニューアルされたことを知って、しばらく前から気になっていた。
なみなみと注がれた茶褐色のお湯がとても気持ちよかった、あの素敵な合掌風呂はどうなったんだろう?
それで、春旅キャンペーンでお得に泊まれる今、久々に訪れてみることにした。

平湯温泉へは新宿から高速バスを利用すると乗り換えもなく、交通費も抑えられて良いのだけれど、運が悪いと渋滞にはまったりもするので、今回は松本まで電車で行くことにした。
松本バスターミナルから高山行きの高速バスに乗り、平湯温泉まで約1時間半。
このバスが走る国道沿いには梓川が流れていて、途中に大きなダムもあり、なかなかの絶景が楽しめる。

梓川を上流へと遡っていった先には上高地がある。明日に予定している上高地ハイキングに思いを馳せ、ウキウキ気分で景色を眺めているうちに、長いトンネルが続くエリアに入り、ほどなく平湯バスターミナルに到着した。

チェックインまで30分ほど時間があったので、アルプス街道平湯のお土産売場でもなかアイスを買ってきて、ベンチでひと休みすることに。昔来た時に美味しくて気に入っていたもなかアイス、今も変わらず売っていてくれて嬉しい。

平湯館は、ここから歩いて3分くらいの便利な場所にある。
リニューアル前がどんな玄関だったか覚えていないけれど、明らかに綺麗になっている気がする。

玄関を入ってすぐ左手にある帳場でチェックインを済ませたら、右手にある下足処で鍵つきロッカーに靴をしまい、スリッパに履き替える。
下足処の隣にはアメニティコーナーがあり、作務衣もここで自分サイズのものをピックアップする。荷物も自分で運ぶし、基本的にセルフサービス。合理的でサッパリしていて、こういうのも良いなと思う。
部屋の鍵もカードキーで、近代的な設備になっていた。
今回予約した仙岳荘の部屋は帳場から離れた位置にあり、乗鞍荘という古い時代の趣を残す建物を経由して到着する。

乗鞍荘には共用の洗面所もあったりして、老舗らしい雰囲気を醸し出している。
飛騨のシンボル「さるぼぼ」人形も、あちこちに飾られている。

畳の上にマットレスを置いたベッドが設置された和室は、それほど広い印象ではないけれど、スッキリしていて過ごしやすい。布団を敷く手間がないのも嬉しい。
窓際には大きめのテーブルがあり、窓の外には庭の池が見えた(自分の手が映り込んで心霊写真風になってしまった...)。

水回りもこざっぱりしていて、必要なものがコンパクトにまとまっている。

お着き菓子がなかったことだけが、ちょっと淋しい。
お茶やコーヒーも部屋には用意されておらず、アメニティコーナーから自分で取ってくるスタイル。後で見に行ったら、アールグレイティーバッグ、インスタントコーヒー、パウダータイプのお茶などがあった。

既にもなかアイスを食べてひと休みした後なので、部屋でお茶を飲むのは後回しにして、早速温泉へ浸かりに行く。
大浴場へ行く途中、「乗鞍階段」を降りてみた。
使い込まれた木の風合いが素敵なこの階段は、急で滑りやすいためエレベーターの方がお薦めだと立て看板には書いてあるけれど、ここを通るのが近道なので用心しいしい利用する。他のお客さんも乗鞍階段を愛用しているようで、上りと下りですれ違うことも多く、館内の交通の要所みたいになっていた。

乗鞍階段を下りたところには、ちょっとした図書コーナーがある。登山関係の本が多い印象。

その先へ進むと大浴場。
午後は階段を上がった2階にある「木響の湯」が女湯となっている。

広々とした内湯に足を踏み入れると、やや薄暗い空間に木の香りが漂っていて心地良い。まずは身体を洗い、ぬるめの方の浴槽に浸かった。お湯はうっすら濁っていて、わずかに茶色っぽい。匂いも刺激も特にない、やさしい感触のお湯。
ざっと温まったところで外へ出て、露天へ移動する。
出てすぐのところにある檜風呂が、記憶にある合掌風呂とほぼ同じだった。
一部に壁が建てられて解放感は減った気がするけれど、素敵な木組みの屋根を見て「そうそう、こんなだった♪」と嬉しくなる。
ただ、お湯の色は茶褐色ではなく、内湯と同じうっすら濁ったお湯だった。
お風呂から出た後に脱衣所で説明書きを読んで、その訳が分かったような気がした。

源泉は4つあり、それがブレンドされて全ての浴槽にかけ流されている。
思うに、4つのうちのどれかが茶褐色なのではないかと。それが色々混ぜ合わされて、あの色になっているような気がする。
ブレンドされたお湯も気持ち良かったけれど、それぞれの浴槽で違った源泉を楽しめたらいいのにな~と、少し残念な気もした。
かけ流しだけど加温・加水・塩素消毒ありという設定もちょっと謎。でも、塩素臭が気になるわけでもなく、風情のある浴場で心地よい湯浴みができて、長旅の疲れが癒された。

お風呂に行ったついでに広い館内をウロウロしていたせいで、部屋に戻ってひと休みしたら割とすぐに夕食の時間になった。
平湯館は夕食・朝食ともにバイキング。地下のバイキング会場に入ると、人気の窓際席は全て埋まっていたため、中央にある大きいテーブルに席を取った。
まずは子芋の煮っころがし、サイコロステーキ、天ぷら、ポテトサラダ、山菜と油揚げの煮物からスタート。

最近はライブキッチンというのを充実させたゴージャスなバイキングが流行りのようだけれど、平湯館は昔ながらのオーソドックスなバイキングなので、全部が全部できたて熱々な訳ではない。それでも、温かい料理でほどよくお腹を満たせるのは嬉しい。

茶碗蒸しと桜風味の胡麻豆腐みたいのを追加して、最後にデザートを。
自分でチャッカマンで火をつけて鍋を楽しむ趣向もあったけれど、既に満腹になってしまった。。。

お風呂は夜12時までなので、11時頃に再び浸かりに行った。

* * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * *

翌朝の入浴は「杣人の湯」にて。こちらの方が露天風呂が広々しているけれど、お湯は昨日と同じで4種混合泉。
大型旅館だから、いつも必ず他のお客さんがいて、お風呂の写真は撮れなかった。

朝食は入場時間が7時~8時のところ、7時50分頃に出かけたら窓際席が空いていた♪

酢飯に具材を載せて自分で作る海鮮丼が楽しい。海鮮丼に合わせて、今朝は和定食風にした。
「漬物ステーキ」という、刻んだ白菜漬けを卵と一緒に焼いたおかずが、素朴ながら独特に美味しい。
デザートには五平餅もあり、奥飛騨気分を味わえて満足♪

いつもなら食後はひとしきり部屋でゴロゴロするところだけれど、今回は上高地ハイキングが待っているので、早速出発することに。
バスターミナルまですぐだから、9:30のバスに乗れる!
と言っても、平湯温泉から上高地に向かうバスは30分に1本出ているので、あまり時間を気にする必要はない。
平日だから空いてるかと思いきや、外国人観光客が大勢いる…。やってきたバスは既にほぼ満席で乗り切れず、臨時増発便が出る有様💧(このバスは平湯温泉が始発だと思っていたのだけど、この人たちはどこから乗ってきたんだろう??)
外国の方々に挟まれて運転手さんに切符を渡したら、Thank you!と言われてしまった(笑)
どんよりとした曇り空の下、30分ほどで上高地バスターミナルに到着。

かなりひんやりしていて、長袖カットソー+麻のカーディガン+ソフトシェルという着込み具合で丁度良かった。
バスターミナルから遊歩道に入る入口のところに、上高地の鳥たちの看板があった。
既に色々な囀りが聴こえていて、今日は何種類の野鳥に会えるかな~♪と期待が高まる。

まずはコマドリに会える確率が高そうな梓川左岸道を歩くことにした。
歩き始めると早速、小梨平キャンプ場近くでゴジュウカラを発見。頭を下にしたお得意のポーズで、木の幹を螺旋階段のようにグルグル回りながら下っている。いつ見ても忍者のような鳥だなぁと楽しく観察。
ちょうどニリンソウという花が見頃で、あちこちに咲いていた。

先へ進んでいくと、ピンカララララ…と、コマドリの元気な囀りが聴こえてきた!
本当にあちこちで鳴いているけれど、なかなか姿は見つからない。
でも、この爽やかな声を聴けただけで幸せ♪と思っていたら、ひときわ近いところから囀りが聴こえた。絶対その辺にいると確信して、笹薮の地面に近いところに双眼鏡を向け、スーッと横に見ていったら、オレンジ色の小鳥が視野に入った。
コマドリいたー✨
近距離から双眼鏡でジロジロ見られていても、あまり気にするふうもなく、つぶらな瞳でこちらを見ている。
可愛い💛と静かな喜びを噛みしめていると、すぐに鳥撮りの人が隣にやってきて、パパラッチのようにシャッターを切り始めた。
シャッター音が鳴り始めた瞬間、コマドリはビクッとした表情で身をよじらせ、飛んで行ってしまいそうに見えたけれど、どうやら気を取り直してくれたようで、再び嘴を天に向けて高らかに囀り始めた。
その後も足で頭をカリカリ掻いてみたり、サービス満点で愛らしい姿を見せてくれた。
あまりしつこく見ていても鳥に迷惑かもと思い、ほどほどのところで切り上げて先へ進むことに。

その先ではオオルリキビタキと思われる鳴き声が聴こえたけれど、木の高いところにいるらしく、姿を見つけることはできなかった。
そして、キビタキツクツクボウシの真似をしていると思われる鳴き声にも遭遇して、これが噂のやつか!と驚いた。
本当にツクツクボウシにしか聞こえないけど、こんな時期にセミツクツクボウシがいるはずもない(そもそもこんな標高の高いところに生息しているんだろうか?)。声の主は確認できなかったものの、これはキビタキに違いない!
そうこうするうちに明神橋に到着。

この辺りまでは引っきりなしに人がいる状況で、クマの心配はほとんどなかった。さらに徳沢の方まで行くと人気がなくなるのかもしれないけれど、ここで橋を渡り、橋のたもとにあるカフェ・ド・コイショさんでひと休みすることに。

ランプが灯された雰囲気の良いお店で、本日のケーキ(ガトーショコラ)とコーヒーを頂く。いかにも上質なチョコレートのお味&しっとり食感で、とても美味しかった💛

ひと息ついた後は梓川右岸道へ入り、河童橋方面へ。
右岸でもコマドリがあちこちで鳴いていて、1羽の姿が見えたけれど、こちらはすぐに逃げて行ってしまった。
しばらく歩くと、道から見下ろす位置にある木の幹に大きめの鳥がとまっているのが見えた。双眼鏡を向けると、カケスだった。枝から枝へと忙しく移動しながら、何かを食べている。見下ろすポジションでカケスを観察できる機会はあまりなかったので、よくよく見れて楽しかった。

さらに進んでいくと、何やらけたたましい声がする。何の鳥だ?と思って見回すと、鳥ではなく猿だった。
群れで移動中のようで、子猿もたくさんいる。(1枚だけそーっと撮らせてもらったけど、ピンボケになった)

猿たちは人間が大勢いる環境に慣れているようで、威嚇してくることもなく、荷物を狙う訳でもない。悠々と傍を通り過ぎていくので、こちらも静かにすれ違う。
上高地では猿に餌をやってしまうような観光客はいないようで、お互いに良い距離間が保てているように思えた。
行けども行けども猿とすれ違うエリアを抜けると、パラパラと小雨が降り始めた。とりあえず帽子を傘がわりにしてそのまま進む。
少し開けた池のような場所(岳沢湿原?)に出たので、木道の端まで行って水面を見渡してみると、遠くにマガモが2羽いるのが見えた。

せっかくだからマガモも見ておこうと双眼鏡を向けると、マガモより近くにオシドリの雄がいた!
あんな派手な色彩の鳥なのに、全然気づかなかった。たまたまマガモがいてくれたから運良く気づけたけれど、そうでなければスルーしてしまうところだった…。
オシドリは水面の水草か何かを食べるのに一生懸命で、ジロジロ見られているのも気にせずこちらに向かってくる。お陰でかなり近くからじっくり観察できた✨
オシドリを見たのも初めてだったので、本当に嬉しく大満足な鳥見ハイキングとなった。
上高地の野鳥たちは比較的警戒心が薄いような気がする。美しい景色を楽しみながら鳥見をするには最高のロケーションだと思った。

梓川左岸+右岸のコースは地図では2時間くらいだけれど、途中で立ち止まって鳥を見たり、コーヒータイムを楽しんだりしたため、結局4時間以上かけてハイキングを堪能した。深い満足感にひたりつつ、14:30のバスに乗り込んだ。

平湯館の部屋に戻った後は、アルプス街道平湯で買ったパンとアールグレイティーでひと休みしてから温泉へ。たくさん歩いた後にゆったり浸かる温泉は格別♪

体力を消耗した後であまりお腹が空かなかったけれど、せっかくなのでちょこっとだけ夕食を食べに行った。こういう使い方が出来るところが、バイキングはありがたい。
食後は少し眠ってから、また11時過ぎに夜の温泉へ。

* * * * * * * * * * * * * * * * * 就 寝 * * * * * * * * * * * * * * * * *

最終日は快晴だった。
爽やかな山の朝の空気を吸い込みながら、広々とした露天風呂で最後の湯浴みを楽しむ。
この4種混合泉は一浴で肌がつるっとする感じではなかったけれど、繰り返し浸かっているうちに、いつのまにかスベスベになっていた。(いい意味で)パンチの弱いお湯なので、どんな体調の時でも安心して浸かれるなと思った。

昨日に引き続き、窓際席で朝食を頂く。

今日は洋食で統一しようと思ったのに、気づいたら和洋折衷になっていた。やっぱりお気に入りの漬物ステーキは外せない。
朝食後、精算を済ませてから部屋に戻った(早めの精算は前日の21時から可能)。あとは、渡された和柄の巾着袋にカードキーを入れて、帳場の前にある籠に返しておくだけでチェックアウトできる。チェックアウト時間に行列ができるのを回避する工夫が素晴らしい。

帰りのバスを12:55の便にしたので、チェックアウト後は平湯温泉マップを片手に周辺を散策してみたけれど、天気が良すぎて干上がってきてしまった。
冷たいものが飲みたい!と思って、ひらゆの森でひと休みすることに(ひらゆの森は飲食だけの利用もOK)。

氷の入ったオレンジジュースが美味しい~♪ 揚げたてサクサクの飛騨牛コロッケもウマい!
フロント横の「喫茶こもれび」は意外にも空いていて、バスの出発時刻までゆったり過ごせた。

新しくなった平湯館は、色々と合理化されてビジネスホテル的な気軽さがありながら、館内には風情があり、気分よく湯浴みができる、使い勝手の良い宿だった。
上高地ハイキングの拠点として最適な宿だと思うので、またお世話になりたい。

=Memo=
1泊2食つき 13,884 yen(春旅キャンペーン価格)
夕食@バイキング会場、朝食@バイキング会場
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-炭酸水素塩・塩化物泉(pH6.6~7.0)
※泉質はホームページの記載に基づく。脱衣所の分析表では「単純温泉」だったような…