鉄鉱泉本館(下諏訪温泉)

昨日の蓼科湖に続いて、今日は諏訪湖で鳥見をする。
お目当てはミコアイサ。ラッキーなことに蓼科湖で会えてしまったので満足してはいるものの、せっかくなので当初の予定通り諏訪湖にも行ってみようと思い、茅野駅から岡谷駅へ移動した。
諏訪湖から天竜川へ水が流れ出す釜口水門というところにミコアイサがよくいるという情報を目にしていたので、岡谷駅で下車した後はまっすぐ釜口水門を目指す。
まずは駅を出て左手に進み、しばらく歩いて線路下をくぐると、頭上に岡谷ジャンクションという壮大な高架橋が現れた。
真下から見上げると軽く眩暈を覚えるようなスペクタクル感。よくもまぁこんな高いところにこんな巨大な橋を造ったものだ...と圧倒されつつ通り過ぎ、よし!これで川岸に出られたと思ったら、目の前に通行止めの立て看板が💧

なにやら工事をやっているらしいけれど、お昼時だからか人の姿はなく、工事も中断している模様。
人がひとり通れる程度の隙間があったので、歩行者は通ってOKなのか?としばし悩み、えぇい、行ってしまえ!と先へ進むことにした。
が、反対側まで行くと完全封鎖されていて出られない状態だったので、仕方なく横っちょのガードレールを乗り越えて脱出した。人っ子ひとりいない工事現場で不審者と化す自分...
後で調べてみたら岡谷駅には出口が2つあり、南口から出ればこんな大回りして線路を越えたり工事現場を突破する必要もなかったのだった。
でも、大回りしたお陰で岡谷ジャンクションを真下から見れたのは楽しかったので、良しとしよう。
これでようやく川岸に出られたものの、歩行者にとっては歩きづらい道路で、なぜか川側には横断歩道がないため、交差点に着くたびに道路の反対側に渡り、横断歩道をコの字型にこなして川側に戻らなければならない。
無駄な信号待ちを繰り返しつつ前進を続けると、ようやく川岸に遊歩道らしきものが現れ、釜口水門が見えてきた。

そして、水門の少し手前の川面にミコアイサの群れがいた。

小さすぎて証拠写真にもならないけれど(しかもピンボケ)、こんな感じの場所にいたのだ!ということで。
蓼科湖にはオスが2羽のみだったけれど、こちらにはメスもいる♪
総勢20羽くらいの群れが、川岸からジロジロ見ている私を警戒する様子もなく、のんびりと川の流れに身をまかせている✨
ほとんどのオスが完全無欠なパンダガモ姿でキメているけれど、中にはまだエクリプス末期なのか変なまだら模様のオスもいる。くりくりした茶色い頭のメスも可愛いな~。
蓼科湖よりかなり近い位置からクッキリ見ることができて、やっぱり来て良かった!と大満足。
周りには全く人がいなかったので、落ち着いて心ゆくまでミコアイサたちを眺めることができた。

十分観察して満ち足りた気分で水門を越え、諏訪湖側に出ると、こちらにはもうミコアイサはいなかった。
このまましばらく湖畔を歩くことにしたけれど、相変わらず今日も底冷え。道端の電光掲示板に0℃と表示されているのが故障中でないとすれば、やはり相当な寒波がきているらしい。
それにしても諏訪湖は広いなぁ。

湖面に張り出している木の枝に何かの鳥が止まったので双眼鏡で見てみるとモズだった。
自宅近辺で普通に見られる鳥も、素敵なロケーションで見ると風情があって絵になる。
芝生の上を歩いていたら、前方の木の根元でカルガモヒドリガモが草を食べていたので、お邪魔しないよう舗装道路に戻り、少し離れたところから観察を楽しんだ。

ヒドリガモは顔立ちが優しげで鳴き声も可愛いので、会えると嬉しい。そういえば以前来たときも、こんな風に群れで草を食べていたっけ。
さらに歩いていくと、諏訪湖の水鳥の案内板があった。

この地点は特に水鳥が多いようで、湖面にたくさんの鳥たちが浮かんでいたので、どれどれ...と双眼鏡を覗いてみたら、ほぼ全てがカンムリカイツブリだった!
これまでカンムリカイツブリは1~2羽で泳いでいる姿しか見たことがなかったので、こんな大群になることもあるのかと驚いた。右も左もシレッとした表情のカンムリカイツブリだらけで、ちょっと笑ってしまう光景。いいものを見た。

ここまで楽しく鳥見散歩を続けてきたけれど、さすがにだんだん寒くなってきた。
日が差している間は良いのだけれど、雲が多くなると風の冷たさが身にしみる...
もう少し歩けばランチが食べられるお店がいくつかあるはず、と思いつつ歩き続けるものの、なかなかその地点に到達しない。諏訪湖の広さをちょっと甘く見ていたかも💧
今回は2泊分の荷物を背負って歩いているので、疲れてくると荷物の重さもこたえてくる。寒いし重いしお腹もすいたしで、早くどこかのお店に入りたい!ということしか頭に浮かばなくなってきた。それでも閑散とした湖畔の道はまだまだ続く。
黙々と歩き続け、もう疲れて1歩も歩きたくない気分になってきた頃、ついに事前に目星をつけておいたカフェ プッカに辿り着いた。

閉店まであと30分もない感じだけど、大丈夫かな...と思いつつドアを開けてみると、普通に迎え入れてくださった。とりあえずホッとする。
カウンターの他にはテーブル席が1ヶ所あるだけの小さなお店。ランチタイムはとっくに終わっていたけれど、単品の食事メニューがあったので、ボルシチペリメニとパンを注文した。しばらく待って料理が出てくると、写真を撮る気力もなく、すぐにガツガツと食べ始めてしまった。
熱々のボルシチが冷え切った身体に染み渡る。あぁ、なんて美味しいんだろう✨と無心に食べ続けた。醤油と辛子が添えられた和風のペリメニも優しい味わいで、あっという間に完食。ハイジの白パンみたいな小ぶりのパンは自家製らしく、ふんわり柔らかい。
カウンターの向こう側では専用のマシンでパン種らしきものがポテポテこねられている。その様子がなんとも可愛らしく、ぼーっと眺めているうちに疲れが癒されてきた。
閉店まぎわに飛び込んで食事を注文した迷惑な客を急かせる空気は一切なく、ゆったりと時間が流れるこのお店の暖かい雰囲気は、店主さんの人柄によるものかなと思えた。
美味しい食事と癒しオーラで元気が出たので、あと一息がんばって下諏訪の温泉街まで歩くことにした。
道を間違えて無駄に体力を消耗したくなかったので、念のため店主さんに道を確認すると、丁寧に地図まで書いて説明してくださった。
カフェ プッカさん、本当にありがとうございました!

教えられた通りに歩いていくと、下諏訪駅は割とすぐだった。ここまで来れば温泉街までの道のりは大体見当がつく。
特に迷うこともなく、鉄鉱泉本館に到着できた。

明治37年創業というだけあって、レトロな風情が漂うお宿。
ちょうど同じタイミングでやってきたお客さんが1組いたので、その方々が案内されている間しばし座って待っていると、やがて女将さんが戻って来られた。
チャキチャキした元気な女将さんに先導されて幅の狭い階段を上り、今宵の部屋「羽衣」に到着。

部屋の入口はドアではなく、施錠できる引き戸になっている。
中に入ると、既に布団が敷かれていた。

カーテンが閉め切られていて解放感とは無縁のお部屋。炬燵や空気清浄機のコードのせいか、やや雑然とした印象もある。
でも、スッキリ整いすぎていないところが逆にいい感じで、まったりと落ち着ける雰囲気。炬燵でくつろいでしまうと部屋から出たくなくなる。
トイレと洗面所は部屋の引き戸を出た外にあった。

予想外に近代的なトイレで、足元にはセンサー式のヒーターが設置されている。中に入るとすぐにスイッチが入り、暖かくなる。
洗面台の前には藤椅子が置いてあり、こちらにもヒーターがある。蛇口をひねると、ほんのり温かいぬるま湯が出てきた。(ひょっとして温泉なのかな?)
さっきの階段を上った先には羽衣の部屋しかないので、このトイレも洗面台も羽衣専用。ヒーターをつけて籐椅子に座りながら歯磨きなどできて、すごく快適♪

のんびりしすぎて炬燵で寝落ちする前に、温泉へ浸かりに行くことにした。
温泉は男女別の内湯が1ヶ所のみ。脱衣所にもセンサー式のヒーターがあって、寒い思いをしなくて済む。

こちらのお風呂は「旦過の湯」という源泉を加水なしでかけ流しており、かなり熱いという評判。女将さんからも「よくかけ湯をしてから浸かってください」と念押しされていたので、覚悟して浸かってみたら、予想外に丁度良い温度だった。寒波のせいでかなり気温が下がっている影響で、いつもより湯温が低いのかもしれない。特に匂いのないお湯で、とてもまろやかな肌ざわり💛 すぐに肌がつるつるになった。
浴槽は真っ黒に見えるけれど、若草石という石で造られているそうで、底の方をよく見れば確かにちょっと緑色だった。湯口の隣にはお茶目なカエルがいる。
洗い場のシャワーのお湯まで温泉なので、湯量はかなり豊富そう。
絶妙な温度な上に、のぼせにくいお湯だったので、長い間ゆっくり浸かることができた。あぁ極楽。。。

浴室と羽衣の部屋は近い位置にあり、ささっと温泉に浸かりに行けて便利だった。
部屋に戻って引き戸を開けると、最初の小部屋に吊るされている灯りが素敵。この灯りが醸し出す陰影は時代小説の中に入り込んだような気分にさせてくれて、見るたびにうっとりする。

部屋で髪を乾かしていると、宿の方が湯たんぽを持ってきて、布団の中に仕込んでくださった。
古い建物だから館内全体に暖房を効かせるのは難しいのだろうけれど、お客が寒い思いをしないようにという配慮が随所に見られて、優しいお宿だなぁと思った。
炬燵の上には緑茶と湯呑の他にカップ&ソーサーとカフェオレスティックが置いてあったので、カフェオレを飲みつつ、持参したパンで夕食にした。

この頃になって、左肩に変な痛みがあることに気づいた。嫌な予感...と思っていると、その予感は的中し、痛みがどんどん増強してきて50肩状態に💦
やっぱり重い荷物を背負って長時間鳥見をしたのがマズかったのかも。鳥を観察する時は変な姿勢で双眼鏡を構えて、その姿勢をキープしないといけなかったりするから、かなり身体に負担がかかったのかもしれない。
湯たんぽのお陰で布団がぬくぬくで嬉しい~♪でも肩が痛い~という複雑な状況でひと眠りし、また夜中に温泉へ浸かりに行った。

+ + + + + + 就 寝 + + + + + +  

翌朝も、アイタタタ...と顔をしかめつつ階段を下りて、まずは温泉へ。
お湯に浸かっている間は不思議と痛みも和らぐ感じ。急性の症状がある時は温泉に浸からない方が良いのかもしれないけど、本人が心地良く感じているのだから、その感覚を信じることにする。
そして朝食を頂きに食事処へ。各テーブルの間には衝立があって、プライベート感が確保されていた。ただ、一番遅い8時半でお願いしていたせいか、既に他のお客さんは誰もいなかった。

テーブルの上にはお品書きがあり、女将さんからも詳しく説明してくださった。

山菜三種盛り(山くらげ炒め煮・わらびのシーチキン和え・ふき味噌クルミ和え)は、どれも歯ざわりが良くて美味。
諏訪湖産わかさぎの唐揚げは甘辛い味つけ。こんな可愛いサイズのわかさぎは初めて食べた。
大きな温泉卵はとてもフレッシュな感じで、つゆが薄味なのも嬉しい。
自家製のカスピ海ヨーグルトは、底の方にシャリッとした蜂蜜が入っていた。

途中で熱々のお味噌汁が出てきた。お味噌はご近所の味噌蔵のものを使っているのだそう。
漬物は野沢菜とキクイモ。爽やかな味わいのキノコのおろし乗せ。
湯豆腐にも地元のお豆腐屋さんの木綿豆腐が使われている。木綿のわりになめらかで大豆の味が濃い豆腐だった。
お米は諏訪湖盆地産ひとめぼれ。
地のものを使って手作りされたクオリティの高い朝食を美味しくいただきながら、お料理を運んで下さったフレンドリーな女性と雑談もして、和やかなひとときを過ごせた。

今回は不運にも50肩に見舞われて100点満点の滞在にはなれなかったけれど、鉄鉱泉本館は不思議な懐かしさを感じさせてくれる、こぢんまりとした人情味のあるお宿。お湯もとても良かったし、お気に入りの宿がまたひとつ増えた♪

=Memo=
1泊朝食つき 12,700 yen
朝食@食事処
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-硫酸塩・塩化物温泉(pH値不明、アルカリ性