風景館(山田温泉)

風景館は、過去に家族で泊まったとき本当に親切にしていただいて、今も良い印象が残っているお宿。ただ、何となく一人泊向きではないような気がしていたのと、タクシーを使わないとアクセスできないと思い込んでいたため(実際は路線バスもあったことが判明...)、再訪する機会がないまま相当な年月が経っていた。
それが、昨年ふとホームページを覗いてみたら、ものすごくそそられる料理プランが出ているうえに、今では小布施駅からの無料送迎サービスもある。
これは絶対に行かねば!と、久々にお世話になることにした。

小布施で下車するなら前から気になっていたカフェKUTENへ行ってみようと、送迎の時間より少し早めに駅に到着した。多少は雪が積もっているだろうという予想は裏切られ、雪は溶け残りがちらほら目につく程度。道路は乾いて歩きやすい状態だった。ポカポカ陽気で道端には福寿草の花が咲いていたりして、もう春っぽい雰囲気。歩いているうちに暑くなり、ダウンを脱いでしまった。

岩松院方面へ、てくてく歩くこと約30分でKUTENに到着。

店内は程よく賑わっていて、すぐに空席に案内していただけた。
ランチメニューのキッシュも美味しそうだったけど、初志貫徹でフルーツタルトにする。暑かったので、冷たいオブセ牛乳カフェオレとアップルパイタルトを注文した。

タルトには大きめにカットして歯応えを残した林檎がゴロゴロ入っていて、フルーツ感をたっぷり楽しめる。カフェオレも牛乳にコクがあって美味しい♪
タルトをほおばりつつ窓の外を眺めていると、木々の間を小鳥たちが飛び交っている。1羽が窓のすぐ外の古びた木のテーブルに舞い降りて、ヤマガラだと分かった。テーブルの上の雪をついばんで水分補給している模様。ヤマガラは野鳥なのに人懐こいところがあって、こんな風にすぐ近くまで来てくれたりするのが嬉しい。
野鳥を眺めながらのティータイムを満喫し、再び30分歩いて小布施駅へ戻った。

駅の案内所で待っていると宿の方が呼びに来てくださり、案内されたマイクロバスに乗り込むと、思ったより多くのお客さんが乗っていた。
やがてマイクロバスが出発し、小布施の市街地を抜けて松川渓谷へ近づくにつれ、周りの風景は雪景色に変わってゆく。小布施町と高山村ではこんなに季節が違うものか...とちょっと驚いた。雪化粧した木々が美しい渓谷に見惚れているうちに、30分ほどのドライブで風景館に到着した。

チェックインの順番が回ってくるまでロビーの椅子に座ってしばし寛ぐ。
渓谷が見晴らせる素敵なロビーなので、いつの季節に来てもその時々の景色が楽しめそう。
やがて私の番になってお声が掛かったので、フロントで食事やお風呂の説明を受けた後、鍵をもらって3階のお部屋へ。

部屋に入ると、オーソドックスな和室の真ん中へんに布団が敷いてあった。窓際の小さな丸テーブルと椅子以外にこれといった家具はないので、8畳の和室がとても広く感じられる。
暖房は床置型の電気ヒーター(風が出るタイプ)だった。
渓谷側の部屋ではないので、窓の外には通りが見える。使いやすい洗面台とトイレもあって、快適。

風景館には大浴場の他に無料の貸切露天風呂があり、露天風呂は1泊につき1回だけ30分間利用できる。ロビーにスケジュール表が置いてあって、入りたい時間帯に名前を記入しておくシステム。夜はライトアップされて風情がありそうだし、早朝も清々しくて良さそうだなぁと結構迷い、しかも四角と丸の2種類の浴槽があるので、どちらにすべきかさらに迷う。
悩んだ結果、明日の早朝1番に丸い方を予約して、まずは大浴場へ♪

脱衣所に掲示されていた分析書には「弱硫化水素臭を有す」と書いてあったけれど、浴室に入っても私の鼻では硫黄の匂いを感知できなかった。
身体を洗い、木曽檜で造られた浴槽のお湯に浸かってみると、ぬるめで心地よい温度。源泉はかなり熱いらしく、湧き水を加えて温度調節されている。試しに湯口から注がれている源泉に触ってみたら、瞬間的に指を引っ込めてしまうくらい熱かった。
無色透明なお湯の中にはフサフサした白いおがくずのような湯の花が大量にたゆたっている✨
フサフサの湯の花を眺めつつお湯に浸かっていると、なんだかすごく癒される。のぼせにくいお湯で長湯できると思ったら、途中で急激にのぼせてきたので、そのタイミングで上がることにした。
大浴場を出たところには、無料のヤクルトが入った冷蔵庫があった(1人1本まで)。

最後にヤクルトを飲んだのはいつのことだったろう...と思いつつ久しぶりに飲んでみると、お風呂あがりのヤクルトはやけに美味しく、身体にも良さそう♪
部屋へ戻る途中、ロビーの片隅にある無料のドリンクコーナーに立ち寄ってみた。
コーヒーマシンの他に色々なフレーバーティーと緑茶やデトックスウォーター(?)が置いてあり、ちょっとしたお菓子もあったりして、すごく充実したドリンクコーナー。

カップ&ソーサーも好きなデザインのものを選べて楽しい。
ドリンクは紙コップに入れて部屋へ持ち帰ることもできる。

色々なアイスキャンディーが入った冷凍庫まであるので、パリパリチョコ入りを1本いただくことに💛
さぁ食べようと窓際の椅子に座り、外の景色に目をやると、動き回っている野鳥がいる。肉眼では誰だか分からないな~残念と思っていたら、隣のテーブルに双眼鏡が置いてあるのを発見!

なんという粋な計らい✨と小躍りしたい気分で隣の席に移動して双眼鏡を手に取ってみると、どこのメーカーのものかは分からなかったものの、かなり性能の良い本格的な双眼鏡。今回は自前の双眼鏡を持参しなかったので、これはすごく嬉しい。コゲラが激しく木の幹をつついて木っ端をまき散らしている様子や、枝に止まってくつろぐシジュウカラの姿がくっきり見えた。シジュウカラはスサーッと翼を伸ばしてストレッチしたり、足で頭を掻いたり、とてもリラックスしていて可愛い。
あまりに居心地の良いロビーなので、アイスの後は紅茶とお菓子を取ってきて、かなり長いこと居座ってしまった。

そして、とても楽しみにしていた夕食の時間がやってきた。
地下の食事処へ降りると、案内されたのは個室だった。

今回予約したのは「体に優しいご飯プラン」という肉・魚不使用のベジタリアンコース。この日、このコースを予約したのは私1人だったようで、そのせいで個室になったのかもしれない。
早速、担当のスタッフさんが前菜を持って現れた。前菜は春菊・えのき茸・長芋・梅肉・とんぶりのお浸しで、菊の花びらが飾られている。繊細な出汁の旨味が素材の味を引き立てて、すごく美味しい!
続いて3段のお重が届けられた。1つ1つがプチサイズのバラエティ豊かなお料理を、お品書きを見ながら壱の段から順に味わうのが楽しい。

壱の段(右):大豆チーズ、茶巾南京、姫長芋唐揚げ、菊花かぶ、むかご松葉串。とろろの上にかかっているのはモロヘイヤ?(なぜかこれだけお品書きに記載がなく)

弐の段(左):白和え、焼き林檎、湯葉のべっ甲餡がけ
参の段(右):刺身こんにゃく・万能葱・黄菊、あけび味噌、甘酒蕪・金時人参甘酢

お重の次は、お吸物と湯葉のお刺身。
お吸物の蓋を取ると裏側には鶴の絵が描かれていて、わぁ可愛い💛と心が躍る。器にもこだわった洗練された盛り付けは、贅沢気分を高めてくれる。
湯葉刺しが載っている銀色のお皿は風景館が所有する最も高価なお皿なのだという小ネタの披露もあって、面白かった。)

お吸物の具材は豆腐と金時人参、ゆり根、三つ葉で、出汁にも動物性のものは使っていないそう。ベジタリアンの人が安心して食事を楽しめる温泉宿は数えるほどしかなさそうだから、このコースはかなり貴重かもと思ったら、やっぱり海外からのお客さんに人気だということだった。
そんな話の端々から、昨年登場したばかりのこのコースがかなりの自信作であることが感じられた。
続いて運ばれてきたのは田楽5種の焼物。3種類の生麩と里芋と豆腐に、それぞれ違う味の味噌がトッピングされている。生麩が大好物なので嬉しい♪

丁度良いテンポで次々と出来立てのお料理が運ばれてくるので、一番美味しい状態で味わえるのも素晴らしい。
コースも終わりに近づいてきて、揚物が届けられた。このあたりでお鍋にも火をつける。

揚物は、里芋の唐揚げ・蓮根の天ぷら・長芋の磯辺揚げを、葛でとろみをつけた柚子風味の餡につけていただく。片栗粉とは舌ざわりが違う上品なとろみが揚物の美味しさをレベルアップしてくれている。
根菜が色々入ったお鍋は味噌仕立て。でも、味噌汁とは違う複雑な味わいの滋味深いスープ。可能な限り最後までよそって飲み干した。
この時点でかなり満腹だったので、ご飯は少な目にしてもらった。それでも食べきれるか自信がなかったけれど、一緒に出されたとろろをかけると意外にもスルッと完食してしまった。

最後はオレンジの皮の器に盛りつけられた果物でサッパリと締めくくる。
ベジタリアンでなくても十二分に楽しめる素晴らしいコースだった✨

幸せな気分で部屋へ戻り、夜中にお風呂に行くまでちょっとひと眠りすることに。
...が、ちゃんと目覚ましをかけておいたのに、無意識に止めたのか、爆睡しすぎて気づかなかったのか、とにかく目が覚めたら23時45分だった💧
お風呂は24時までなので、今晩はもう無理。なんてこったー!と歯噛みをしつつも頭を切り替え、明日の早朝に大浴場と露天風呂をハシゴすることにした。

+ + + + + + 就 寝 + + + + + +

翌朝は5時に起床して、いそいそと大浴場へ。
今朝は昨日と違って湯の花がほとんどなかったので、夜間にお湯を抜いて入れ替えたに違いない。また夕方になると湯の花がたまってフサフサになるんだろうな。
このお湯は浸かっている時にはそれほどツルツル感を感じないのだけれど、乾いてから肌を触ってみると柔らかくスベスベになっている。美白効果もある気がする。そして代謝も上げてくれるようで、昨晩は暖房要らずのポカポカ状態だった。
大浴場で温まってから、いったん浴衣を着て露天風呂へ移動する。

小鳥風呂というネーミング、いいなぁ。運が良ければ近くの木に野鳥が止まってくれたりするんだろうな。
露天風呂には洗い場がなく、脱衣所も吹きっさらしなので、大浴場で温まってから来て良かった。お湯の温度は大浴場より少し高い感じで、冷たい外気と丁度良いバランス。

最初は肩まで浸かり、のぼせてきたら浴槽内の段差に腰かけて雪景色を眺めつつ、ゆったり湯浴みを楽しんだ。

朝食は昨晩と同じ個室にて。
席に着くと、豆皿に盛り付けられた色々なおかずが勢揃いしていて圧巻。

朝はお品書きがなかったので何者かよく分からない食材もあったものの、どれも出汁の味がよく染みていて美味しい。豆腐のお鍋に入っている透明のコリコリしたのは、白きくらげかな?
朝食だけで1日分の野菜が摂れたような気になる。

サラダと果物の間に置いてあるのはオイルと塩とレモンで、自分の好きな加減でサラダにかけて食べられるようになっている。
後からおかゆも出てきた。昆布の旨みが効いて味わい深いおかゆだった。

帰りの送迎車が9時30分発なので、朝はちょっと慌ただしい。
本当に居心地が良かったので、1泊ではもの足りないな...と思いつつ送迎車に乗り込んだ。お風呂にもっと入りたかったし、外の大湯にも行きたかったし、今度は連泊してロビーでゆったり過ごす中日を楽しみたい!

帰りは20分ほどで小布施駅に到着した。
せっかくなので、今日も別のお店でケーキを食べて帰る。1年半前の新栗シーズンに来た時は行列ができていて入店を諦めた栗の木テラスに、この日はすんなり入ることができた。

クラシック音楽がかかっている素敵な喫茶室で、念願の栗ロールケーキを注文。栗の木テラスは紅茶のラインナップが充実しているのも嬉しいところで、迷わずウバを選んだ。ポットで出されるたっぷりの紅茶と共に栗ロールケーキを味わい、至福のひととき💛
月曜の朝からケーキを食べにくるような酔狂な客は他におらず、食べ終えて店を出るまで喫茶室には私1人だった。

とても久しぶりに再訪した風景館は、ナチュラルに親切な接客はそのままに、色々と進化を遂げているように見えた。他にも1人客が数名いたようだったし、1人泊向きではないという印象は完全に間違いだった。
このたび会員になったので、今後お得な情報など送られてくると思うし、次回は絶対連泊しよう!

=Memo=
1泊2食つき 21,150 yen
夕食@食事処、朝食@食事処
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム・カルシウム-塩化物泉(pH7.4)