山崎屋旅館(安代温泉)

この秋は、かなり久しぶりに湯田中を訪れた。前回来てから10年以上が経っている。
折しも全国旅行支援とやらが始まっていて、平日だというのに新幹線が観光客と思しき人々でほぼ満席なのには驚いた。(が、軽井沢でゴッソリ降りてゆき、その先はガラ空きとなった)
湯田中長野駅から長野電鉄の特急スノーモンキーで約45分。

冬の地獄谷で雪を被って温泉に浸かるサルたちは湯田中のシンボルだから、そのシーズンには楽しみに見に来るお客さんが多いんだろうな。
でも今は秋なので、車窓には赤い実がたわわになったリンゴ畑の風景が広がっている。いかにも信州らしい眺めで旅情がかきたてられる。

湯田中駅到着後、駅前のカフェで昼食を取ってからバスに乗るつもりだったのが、見事にカフェが閉まっていたため、昼抜きのまま宿まで歩いて行くことに💧
今回お世話になるのは、前々からその存在は知っており、泊まりたい宿リストに名を連ねていた山崎屋旅館さん。家族経営のこぢんまりしたお宿(全部で8部屋)で、お料理が美味しいと評判なので楽しみ♪

チェックイン3時~のところ2時過ぎに着いてしまったので、荷物だけ預けて近所を散歩しようと思ったら、にこやかに「もうお部屋の用意ができているのでどうぞ」と言って下さった。ありがたい!
今回泊まる「岩菅の間」は階段を上がった2階にある7畳の和室で、石畳の小路に面しており、窓からは安代温泉の大湯の建物が見える。

こちらでは全ての部屋でトイレは外の共同なのが若干不便ではあるものの、部屋のドアを開ければすぐそばに男女別のトイレがある。洗面台は部屋の中にあるので、頻繁に手を洗いたい私にとっては助かる。
エアコンもガスの暖房器具もついているので、夏の暑い時期や真冬でも快適に過ごせそう。

部屋に用意されていたお茶とお饅頭で一服し、昼食がわりのじゃがりこでお腹を満たしていると3時になったので、まずはお風呂に浸かりに行くことにする。
通常は男女別の内湯が1つずつのようだけれど、コロナのせいで貸切制になっていた。
一番乗りで2つとも空いていたので、最初は大きい方のお風呂に入ってみた。
浴室前のドアにかかっている紙のスケジュール表に名前を記入し、入浴中はドア前に「貸切中」の立て看板を置いておく。

4人くらいは余裕で入れそうなサイズの浴槽で、奥にはいい感じの風景画が飾られている。(ちょっと銭湯風?)
身体を洗っていざ浸かろうと足を入れた途端、予想外の熱さに仰天した!
このままではちょっと浸かれない…と思い、申し訳ないけど水で薄めさせてもらうことに。でも、焼石に水な感じなので、思い切って身を沈める。熱いぞ~!
2分ほどがんばって浸かり、上がってみると足の先まで茹でダコ色になっている。
…が、不思議なスッキリ感がある。どうにか酷暑を乗り切った後の秋には体調がモヤモヤ気味で、どうもパッとしないことが多いのだけれど、それが喝を入れられたような感じ。
ひと昔前に流行った野菜の50℃洗いというのを思い出した。あれと同じで、ヒトも50℃(?)で洗うと細胞がシャキッとするのかも知れない。
どちらかと言うとぬるめのお湯にダラダラ浸かるのが好きだったけれど、あつ湯の良さを見直した。
2分浸かっただけなのに、浸かったとたん肌がツルツルになり、かなりパワフルなお湯。
スッキリしたところで、ちょっと周辺を散歩してみる。

石畳の小路を奥へ進んでいくと、すぐ隣に渋温泉がある。
並んでいるのは小規模な旅館ばかりで、昔ながらの静かで落ち着いた雰囲気が良い。
有名な「歴史の宿金具屋」の建物を見物してから川沿いの車道へ出て、宿に戻った。

今日は昼抜きだったので、お腹が空いて6時からの夕食が待ち遠しかった。
宿のホームページでは夕食・朝食ともに広間となっていたけれど、夕食はお部屋に持ってきて下さった。空いていて余裕がある日はそうなるのかも。

最初に届いたお膳は、お刺身、紅鱒ときのこのマヨネーズ焼き、色々きのこのおろし和え、エリンギ肉巻きと帆立焼き、かぼちゃスープ(牛乳は入ってなく、和風)、茶わん蒸し。どれも出来たてで温かく、やさしい味付けで、期待通り美味しい💛
おろし和えのきのこも粉をまぶして揚げてあるのか、手が込んでいる。

途中でエビフライとご飯・味噌汁が登場した。揚げたてサクサクのエビフライは衣が薄く、好みのタイプ♪ 添えられているレタスもひときわ新鮮で、シャリッとした歯触りが最高。どの料理も素材から素晴らしい感じ。
ひととおり頂いた後、帳場にご馳走さまの連絡をすると、食後のフルーツ(リンゴとぶどう)を届けてくださった。
ちょうど良く満腹になり、幸せな気分でしばしゴロ寝する。

入浴できるのは夜10:30までなので、寝落ちしないよう念のため目覚ましをかけ、今度は小さい方のお風呂に浸かりに行った。

小さい方は、本当にこぢんまりしたシンプルなお風呂で、身内でなければ2人で入るのはちょっとためらわれるサイズ。そして、やはりこちらも熱い(笑)
でも、浸かってみると意外に浴槽の底の方のお湯は冷めていて、かき回すとちょうど良い塩梅になった。
そして、かき回してみて気づいたけれど、ただの無色透明ではなく、黒い湯の花が浮かんでいる。浴室が小さいせいか、窓を細く開けて外気を入れると温泉のいい匂いが引き立つ気もする。
大きいお風呂の方が人気でスケジュールも埋まっているけれど、実は使い勝手が良い小さいお風呂が気に入ってしまった。
不思議なのは、どこにも成分分析表が見当たらないことで、お湯のプロフィールが分からない。源泉は大湯と同じなのだろうか?と思って宿の奥さんにお聞きすると、やはりそうだった。
ホームページで確認すると、源泉は93℃、湯落ち口55℃、ナトリウム-塩化物硫酸塩温泉のかけ流し。
長湯しなくてもポカポカになって、すぐに気持ちの良い眠りに落ちた。

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朝もあつ湯でシャキッと目を覚ましてから、朝食をいただきに広間へ。

隣の席にも1人旅のお客さんがいたようだけれど、食べ終えて退席された後だったので、広々とした広間でただひとり静かに朝食を味わう。
左の写真では殺風景に見えるけれど、実はピアノが置いてあったり、可愛い花も飾られていて、心和む空間。

まずは枝豆の混ぜご飯と、おかずたちが出てきた。どれもちょうど良い塩加減のやさしい味つけで、胃が喜んでいるのが分かる。卵焼きもしっとり柔らか💛

続いて焼き野菜(シーザーサラダ風の味付け)と白いご飯が届いた。お米はご当地のブランド米「雪白舞」。
どこの温泉へ行っても、その土地の美味しいお米が食べられるのは嬉しい。

朝も程よく満腹となり、部屋へ戻る途中でご主人に今日の予定を聞かれたので、小布施へ散歩に行くと答えたら、お薦めのケーキ屋さんを教えて下さり、散歩マップも持ってきて下さった。到着した時もそうだったけれど、山崎屋さんの接客は本当に親切でフレンドリー!

部屋でひと休みしてから、バスの時間に合わせて小布施へ出発。
バス停で空を見上げると、見事なうろこ雲だった。秋だなぁ。

今日も特急に乗って、小布施まで20分くらい。自由席特急券が100円なので、気軽に特急が利用できる。

雰囲気のいい小布施駅を出て、まずは栗の木テラスを目指す。以前ここで食べた栗ロールケーキが絶品だったので、また味わいたいと思っていたのだけれど...着いてみたら既に行列が出来ている💧
今はまさに新栗のシーズンなので、平日とは言えやはり混んでいたか~。
で、あっさり諦めて、宿のご主人イチオシのパティスリーロントへ行ってみることに。

栗の木テラスがある中心エリアを離れると途端に人通りが少なくなり、こちらは行列もなく落ち着いていた。良かった。
フランスっぽいお店に入ってみると、美味しそうなケーキや焼き菓子、パンが盛りだくさん♪
残念なことに、この日は喫茶がお休みだった。でも、セルフサービスで中で食べることは可能ということだったので、そうさせて頂くことに。
ショーケースの中でひときわ輝いている「季節限定モンブラン」(750円)をお買い上げし、喫茶スペースに用意された紙皿に載せ、飲み物はセルフサービスのお水(笑)

滑らかで風味豊かな栗ペーストが美味なのは勿論のこと、内側の生クリームも香り高く濃厚で、栗に負けない存在感がある。甘い栗ペーストと甘さ控えめな生クリームが口の中で溶け合って、絶妙なハーモニー💛 台はサクサクのメレンゲだった。
この季節ならではの極上のモンブランを堪能した!

すっかり満足してお店を出た後は岩松院方面へ向かい、雁田山の山裾に沿ってせせらぎ緑道を散歩する。

だんだん山が近づいてきて、ますます人がいなくなる。
まだ紅葉には早いけれど、暑くも寒くもなく、散歩が気持ちいいシーズン。
あちこちでモズがギチギチ鳴いていたり、焚火の煙の匂いが漂ってきたり、秋の風情を楽しみながら長閑な道をのんびり歩く。

せせらぎ緑道に入ると、道に沿ってリンゴ畑が広がっている。小布施は栗の町として名高いけれど、こうして歩いていると栗畑よりリンゴ畑の方が目につく。ブドウ畑も多いし、栗に限らずフルーツの町なのだなと思う。
おぶせ温泉に行き着いたところで駅方面へ戻ることにして、軽くお昼を食べようとお蕎麦屋さんに入った。たぬきそば(かき揚げつき)を注文したら、オマケっぽく書いてあったかき揚げが予想を裏切る巨大さで到底食べきれず、半分以上残すことになってしまった。申し訳ない。。。

帰りもすっかりお馴染みの特急に乗って湯田中へ戻ると、ちょうど良くバスが来た。歩いても20分強だけれど、やっぱりバスは楽。
宿に戻ってすぐ午後の入浴に行こうとしたら、昨日よりお客さんが多く、スケジュール表が結構埋まっていたので、空いている時間まで少し待って、大きい方のお風呂に入った。あつ湯にも慣れてきて、昨日より長く浸かれた。

夕食は今日もお部屋で。

今日のメニューは川魚がテーマのようで、お刺身は鯉・岩魚・信州サーモンの組み合わせだった。岩魚は塩焼きもあって、ほんのり温かくふわふわの焼き加減がすばらしい。真ん中の左にあるのはレンコンのすり流し(?)で、爽やか。その隣のきゅうりとしめじの白和えっぽいのにはリンゴが入っていて、リンゴの甘味がいいアクセントになっている。途中で届いた天ぷらには、海老や茄子に加えてパプリカがあった。パプリカの天ぷらって初めて。とても美味しかった。
…が、この辺りからお腹が苦しくなり始め、肉巻きと茶わん蒸し風のお料理は泣く泣く諦めることに…💧
お昼のかき揚げが未消化で、十分に空腹でなかったのが悔やまれる。茶わん蒸し風の落とし卵の下はどうなっていたのか、食べてみたかった。
最後に茹でたての手打ち蕎麦も届くことになっていたのに、本当に残念。。。

ちょっとションボリな気分になってしまったけれど、しばらくゴロ寝して腹ごなしができてから、気を取り直して夜のお風呂へ。
灯りがともった夜の2階の温かい雰囲気が好き。坪庭のような一角があるのも面白い。

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最終日の朝食は昨日と比べてお客さんが多く、2人連れが3組と、1人のお客さんが私含め2名だった。ちょうど良いバランス。

今日も最初は混ぜご飯(舞茸入り)が届き、続いて白いご飯が来た。
シャケだと思って食べ始めた焼き魚はちょっと違う感じで、西京味噌か何かに漬けてあるのか、身がトロッとした食感ですごく美味しい。シャケも手を加えるとこうなるのか、あるいは別の種類の魚なのか?
温泉卵のつゆが塩辛すぎないのも嬉しい。朝も夜も新鮮な野菜が色々食べられて、どのおかずも間違いなく味付けが良くて、こういう食事は本当にありがたい。

チェックアウトの際には、お土産に自家製の梅シロップを下さった。
パワフルなあつ湯と美味しいご飯、気さくなご主人とおっとりした奥さんの接客でほのぼのした気分になれる山崎屋旅館さんに、今度は志賀高原ハイキングと組み合わせて泊まりにきたいなーと思いつつ、帰途についた。

バス停でバスを待っていると、道路の向かい側にあるイチョウの木からキョッキョッ!と大きな鳴き声が聞こえたので、おやアカゲラかな?と思って目を凝らすと、アカではなくアオがいた。
アオゲラは運が良ければ都内の公園でも見られるキツツキだけれど、これまで会えたためしがなく、いつか会ってみたいものだと思っていたら、まさかのバス停で遭遇(笑)
野鳥は思いもよらないところに突然現れるから面白い。

湯田中駅に到着して切符を買おうとしたら、自動券売機の前で駅スタッフの女性がとおせんぼをして何か説明している。
故障かと思って近づいて聞いてみると、なんと今日は長野電鉄100周年記念イベントの日で、どこまで乗っても100円なのだそう。切符は買わなくて良いので、降りる駅の改札で100円払って下さいとのことだった。
いいのか、長野電鉄!コロナで痛手を負っているだろうに、なんと太っ腹な…
でも、おかげで車内にはウキウキした雰囲気が満ちていて、最後の最後まで楽しい旅だった♪

=Memo=
1泊2食つき 12,650 yen
夕食@部屋(通常は広間?)、朝食@広間
Check in 15:00/out 10:00
温泉:ナトリウム-塩化物硫酸塩温泉(pH8.4←大湯の分析表に基づく)

<忘備>

  • 小布施の岩松院の近くにあるカフェKUTENにも行ってみたい。フルーツタルトが美味しそう。
  • JR長野駅の駅ビル内のお土産売場に桜井甘精堂が出店していて喫茶スペースもあったので、こちらでモンブランを食べるという手もある。
  • 同じく駅ビル内のお土産売場にある「いろは堂」のおやきが美味しい。
  • 長野電鉄へ降りる階段横に神戸屋があったので、2日目の軽食用のパンはここで買うと良さそう。